「そんな当たり前のこと言ってないで、さっさと回ろうぜ」

 相変わらずの仏頂面であいつはさっさと歩いて行く。

 あんな顔をしているとはいえ、あいつが積極的に楽しもうとする姿勢を取るのは珍しい。

 これもやっぱりお祭りの特殊な雰囲気だからだろうか?



「はい、そうですね!」

 そういえばみゆきも今日はテンションが高いから、やっぱりそういうもんなんだろう。

「待ちなさいよ! はぐれたら大変でしょ!」

 かくいう私も。ただ私の場合は祭り以外の理由も存在するんだけど。



 こんな時だからこそ、みゆきにこの気持ちを出して話を聞いてもらいたい。



 今なら素直に言える気がする。

 そしてみゆきなら笑ってアドバイスをくれることだろう。

 きっとそれは凄く簡単で、でも私には到底浮かばないもののはず。



 でも実際はみゆきと二人になる機会は未だに訪れていない。かといってあいつとは少しでも長く近くにいたい。

 痛し痒しである。



「かがみーほらワタアメだって、甘いらしいから買うんだろ?」

「ちょっ!? 人をなんだと思ってんのよー!?」

 少し先であいつが、これまた珍しく笑ってる。そして隣にはみゆき………。



 ん?



 あれ?



 そういえば今日は、やたらみゆきはあいつの隣にいる気がする。

 みゆきと話してるのもあいつを隔てての記憶ばかり………。

 気のせいなんかじゃない、つかさと話す時もこなたと話す時も、前か後ろだったのに



 でもどうして?



 顔を上げるとみゆきはあいつを見ていた。

 そしてその表情から私はある予想を抱いた。



 確かに思い返してみると、思い当たる節が………。

「かがみ、みゆきさん戻るぞ」



 考えはあいつの声によって中断される。



「こなた達が終わったってさ」

 あいつの声がえらく脳天気に聞こえた。





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