「だけど多いよな、ソレ」

 買われたりんご飴を回しながら、あの方が目だけで私達を見られます。



「それって浴衣のこと?」

「ああ、動きにくくないか?」

「そうですね、慣れていないとすぐに着崩れしてきてしまいますね、ですがこれを着ているとお祭りに来たという感じがしますよ」



 あの方の服装は私達と違って私服です。

 ほとんど制服姿でしかお会いできない私としては貴重なのですが、

そこはやはり浴衣姿のあの方を見てみたいと思うのは高望みなのでしょうね。



「そんなものか。着たことないからな」

 と言ってあの方はリンゴ飴をかじられます。

 こんなにも日本語を流暢に話されるのに、浴衣を着たことがないというのは少し不思議です。

 それにお祭りも初めての様ですし………

 ですから泉さんの先ほどのお言葉も本心なのでしょう。



「あんたは風流を愛する心がないわね〜」

「お前が言うか」

 とあの方は、欠けたリンゴ飴を振りながら突っ込まれます。



 くすっ



 吹き出した私を、お二人が不思議そうに見られます。

「すみません、杞憂なことでしたね」

「何が?」

「いえ、こうして三人で行動するのは初めてでしたから」

「そういえばそうだな」

「まあ知らない仲じゃないしね」

 もちろん今までにはそれぞれに個々では繋がりがありました。

 ですがやはり三人でとなると、同性同士で付き合いも長い私とかがみさんばかりになるかと思っていたのですが、お話の中心はあの方。



 私があの方にお話を振るのはもちろん理由があるのですが、やはりかがみさんも同じ理由なのでしょう。





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