「今この娘から取ったもの出せよ」

 そう言って、あいつは一人の男の人の腕を締め上げる。

 その迫力は有無を言わさないものがあり、いつものあいつより鋭い。

 あいつの様子に恐怖したのか、男が空いている手で懐から財布を取り出す。

 あいつはそれを受け取ると、私達の圧倒されている雰囲気を気にする様子も見せず、持ち主であるつかさに財布を渡す。



「気を付けろよ」

 つかさはおそるおそる財布を受け取ると、怯えを抑えながら感謝の言葉を告げる。

「ありがとうアスカくん」

「べ、別に大したことじゃないしな」

 ぎこちないながらも嘘偽りのないつかさの言葉に、あいつはぶっきらぼうに答えるけど、ひょっとして照れてる?



「いや〜ナイスツンデレ!」

 間髪入れずにこなたが親指を立てるものの、あいつによって頭を押さえつけられる。

 その一連の動きはあまりにもコミカルで、鮮やかなものだった為、場の緊張が解けていく。



 今のだってつかさのだし、ほっておこうと思えばできたのにそれをしなかった。

 やっぱりあいつはただ怖いやつじゃない



 それだけのことなのに、私の胸は暖かさを覚える。

 本当にただそれだけなのに



「シンありがと」

「なんでお前が言うんだよ?」

「まあ姉としてね

 でもよく分かったわね?」

 こんなところでスリをやるんだから、きっと常習犯なんだろう。

 それを捕まえるなんて、果たして偶然なんだろうか?



「………。まあな」

 答えになってないあいつの問いだけど、突っ込めば怒ることを私は知っている。

 どうにもあいつには秘密が多すぎる。



「ふ〜ん、まっ、ありがと」

 といっても今の私じゃそれを聞けない。

 あいつが私にそんなに心許してくれてないのが主な理由。こなたの言葉を借りればフラグが足りてない、っといったところだろうか



 でもだからかな



 もっとあいつと仲良くなりたい





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