「はい、分かりました、はい」

『あっそうそう、シンが来ることはかがみには内緒ね』

「どうしてですか?」

『そりゃあ、かがみの慌てる姿が見たいし』

 泉さんのあの無邪気な笑顔が頭に浮かぶと同時に、日頃から考えていたことも過ぎります。

「かがみさんはシンさんのことを、やはり、なんでしょうか?」

 回りくどい言い回しは、やはりあの単語を言うのが恥ずかしかったからです。

 お恥ずかしながら、最近ではその単語を見るだけで鼓動が激しくなってしまうのです。



『わたしも本人から直接聞いたわけじゃないからねー、でもまあそうじゃない?』

 少しの間があっての答えは、私の言い方が分かりにくかったからというわけではなく、泉さんの方で考えておられたからでしょう。

『態度がね、明らかにツンデレ………、まあ思春期の子みたいな反応じゃん

 まあ、それが見てて楽しいんだけど』



 この場にかがみさんがいたら、一体どんな顔をされるのでしょうか?

 それを考えると、どう反応してよいものか



「そうですね」

 結局私は、肯定とも否定とも取れる曖昧な言葉で返します。

 その後今日のお祭りについての打ち合わせをして、電話を切りました。



「やはりかがみさんも………」

 私だけならまだしも、泉さんもそう感じているのならほぼ間違いではないでしょう。

 かがみさんがあの方のことを気にしてると気付いたのは、あの方のことへの気持ちが明確に分かった時から。

 明らかに他の男子の時とは違う表情をするかがみさん。

 ですがかがみさんの方は、私があの方に気があるというのを気付いてはおられないでしょう。

 そうしないように私は普段通りを心がけていましたから。



「かがみさん………」



 ですが、最近思うようになったのです。



 自分は卑怯なのではないかと



 かがみさんは恋敵になるかもしれませんが、その前に大切なお友達です。

 その方に何も言わずに同じ人を好きになり、影でこっそりアプローチをするなんて

 こんな八方美人的なことをしていては私は両方を失ってしまいます。



 もちろんこれは私の考え過ぎかもしれません。

 実はかがみさんはあの方のことを、お友達としてしか見られていないのかもしれません。



 しかしそれはあまりに自分に都合の良い考えではないでしょうか?

 でしたらかがみさんに打ち明けれるのか、それでもしかがみさんが私に敵意を持たれてしまわれたら?



 高校に入って出来た親友といえるお方。

 私はその方を失ってまで、実るか分からない恋に邁進しても良いのでしょうか?



「かがみさん………、シンさん………」



 瞑目するものの答えは浮かんできません。





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