『宣戦布告』





「ねぇ〜、シン行こうよ〜」

「…………」

「楽しいよーお祭りは、出店に浴衣にフラグ乱立!」

「興味がない」

 人の頭に乗っかり誘ってくるこなた。

 暑い暑いと文句を言ってるクセに、こういう時はそんなものを感じないらしい。

 もっともオレは暑さじゃなくて頭痛を感じてるけど



「行こうよ〜」

 一向に無視してるが、こなたはそんなことに怯むことなく今度はオレの頭を操縦桿の様に前後左右に揺さぶる。

 こうなるとこっちも無視以外のアクションを取らなければならない。それはコイツと住み始めて数ヶ月のことで分かったこと。



「行かないって、言ってるだろ!」

 オレは猫の様にこなたの首根っこ辺りを掴み放り投げる。

「なんでー?」

 視界の隅でこなたが器用に着地しているのが見えた。

 相変わらずいい運動能力だ。もっともそれが日常でまともに活かされているとは言えないけど。

 まあそれはオレも同じだ。

 こんな平和な世界でさらに今は夏休みの真っ最中、することも特にない。

 本当はこんなのんびりとしてたらダメなはずなのに



「ほら、また怖い顔してる」

 余計な餌を与えてしまったと思うが、もう遅い。

 再びこなたはオレに近付いてくる。



「行く理由がない」

「ううん、わたしはきみをゆる〜くするって決めたから」

 オレはそんなの許可した覚えはない! と言ってもコイツのことだからきっとなんだかんだでオレを連れて行こうとするはずだ。



「シン君」

 どうしたらこなたを諦めさせるかと思案していると、この家の主そうじろうさんが顔を出す。



「悪いけど祭りに付き合ってあげれないかな? なんでもこなたたちは女の子だけで行くっていうし、ボディガードってことでさ」

「はぁ………」

 そうじろうさんは娘であるこなたを溺愛している。だからそんなことを言ってくるのも分かるし、

何よりオレはそうじろうさんには色々とこの世界でお世話になってる。

 となると不本意だけど答えは決まっている。



「分かりました」

「おお、そうか!」

「やったー!」



 でも、なんだかハメられた気がするのは気のせいか?

 手を叩き合う親子を見て釈然としないものが残った。





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