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「だからこのシンちゃんが助けてくれたんだよ、お分かり?」
「……うん、まあ」
こうの友達である彼女はまるで人形の如く一切表情を崩さず頷く。
いや、訂正する。人形はもっと愛想がいい。
オレの知り合いにも表情をあまり表に出さない子はいるけど、それとは全く違う。
なぜなら彼女からは明らかにオレに対する敵意が感じられるからだ。
まあ理由は分からないわけじゃない。見ず知らずの男がいきなり来たのだから警戒はするだろう。
しかしもう少しくらいなんとかしてほしいもんだな。
「じゃあほら、全て解決した事だし改めて自己紹介といこうか!」
この雰囲気で全て解決したと言い切るこうは大物なのか、バカなのか。
取りあえず普通のヤツじゃないのは確かだろう。
「ほらほら、やまとから」
「永森やまと」
こうに促された形でした彼女の自己紹介は簡易型を通り越して劣化型ものだった。
そして当然、オレの方など全く見ずに。
なんなんだコイツは?
いくら気に入らないからって、ここまで露骨の様子はないだろ
気に入らないな
「やまとはねー私の親友。今は聖フィオリナ女学院に通ってるんだよねーちなみに私と一緒で二年生」
場の空気を察しているのかいないのか、こうは陽気な声で永森やまとに対する補足説明をする。
「アスカ・シンだ、陵桜学園に通ってる」
「えっ、うそ!? 何年?」
「……3年だけど」
「あ〜通りで見た事あると思った! ……って三年!? 先輩だったの!?」
素っ頓狂な声を上げるこう。どうやらあっちも陵桜の生徒らしい。ちなみに永森やまとの方は興味無しの顔。
もはや誰のための自己紹介か分からない。
「いや〜これは知らぬ事とはいえ失礼しましたー」
いきなり敬語で話し出すこう。
こっちの世界の人はやたら年齢にこだわる。それは豪快ともいえるこうでも例外ではないらしい。
「でもまあこれからもよろしくお願いしますね、シンちゃん先輩」
「シ、シンちゃん先輩!? なんだよそのふざけきった呼び方は!?」
「いやいや最初にシンちゃんってもう言っちゃいましたしね、今更変えれない、かといって先輩でもあるし敬意を払わないといけない
そう考えるとバッチリな呼び方だと思いますけど?」
こうはまるで世紀の大発見をしたかのような顔でこっちを見てくる。
もちろんそれは世紀の大発見でもなんでもない。
オレからしたら謹んでご辞退したい呼称だ。だいたいオレが『ちゃん』付けされるキャラかよ?
もっともオレを唯一『ちゃん』付けするヤツに言わせればピッタリだそうだが、認めたくはない。
でもこういうヤツに言っても無駄だという事をオレは嫌になるくらい知っている。
「そんな事より早くここから離れましょ、いくら私でも限界があるわ」
「そうだな」
相変わらず無愛想な顔で言ってくる永森やまとにオレは力無く頷く。
出会ってしばらくしてオレと永森やまとはようやく会話らしい会話を行った。