「ってごめん、今何時か分かる!?」

 面白い顔をしてる彼に私はある事を思い出し、彼の腕時計を覗き込む。

 やばっ! 待ち合わせの時間もう過ぎてるーっ!!

 私の脳裏に待ち合わせ相手のいつも以上に不機嫌な顔が思い浮かぶ。

 急いで行かないと………。



「おい、どうした?」

 回れ右をした私に掛かる声。

 あーそうだー! 彼に助けてもらったお礼もしないと………。

 このまま何もせずに立ち去るのは生徒会の会計兼漫研部部長、八坂こうの面子がない!

 それに彼を連れて行けば遅刻の理由の証明になる!

 そうと決まれば………。

「着いてきて!」

「お、おい!?」

 私は彼の手を掴むと走り出す。

 幸い私がやってたゲームはさっきのゴタゴタでもうGAME OVERになってるし、何も未練はない!



「ちょっ! 待て! おい、あんた!?」

 後ろで何やら喚いてる彼。

 うむ、なかなかリアクションが良くてよろしい! あの子もたまにはこれくらいのリアクションの良さを出して欲しいね!

 私は無愛想な顔の待ち合わせ相手に心の中で語りかける。



「なんで引っ張るんだよ!?」

「お礼をしなきゃね、助けてもらったお礼をさ!」

「そんなのいるかよ!」

「若者が遠慮するんじゃないよ!

 あっ、そう言えば自己紹介がまだだったね。

 私は八坂こう、こうとかこうちゃんで夜露死苦!」

「…………。アスカ・シンだ、シンでいい」

 分かってくれたのか(でも何故か溜め息で仏頂面)、彼も自己紹介をする。

 はて? どこかで会ったかな?

 まあ、いいや! 今は待ち合わせ場所に一分一秒でも着くのが先!



「よし! 走るよ!」

「……もう好きにしろよ………」

 私達は炎天下の中、外へ飛び出した。





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