K.O!



 画面に文字が躍る。

 ノーダメージの会心の勝利だった。

「ふん、大した腕もないくせに」

 9人目だからどんなに強いのが来るかと思ったら拍子抜けだ。これは10人達成も楽勝だな



 いや



 オレはそこまで考えて首を振る。

 どうもオレはすぐに調子に乗ってしまうとこがある。これは自他ともに認めるオレの欠点だ。

 これを克服しないとあいつには勝てない。そのためにオレは今ここにいる。

 オレが気を引き締めてる間に10人目がやって来ていた。

「どんな相手だろうと戦ってやるさ!」

 オレは小さく呟くと、相手との距離を取った。





 戦況は互角に展開していた。



 だが





 K.O!



 僅差の差でオレは敗北した。



 ブシュ!



「クソ〜!!」

 オレ一息にジュースを飲み干してから唸る。

 体の中に入った冷飲料はオレの熱を覚ます。

 オレは冷めてきた頭でさっきの戦いの敗因を分析する。

 腕前は5分だった、未練がましいがどっちが勝っても不思議じゃなかった。

 だが結果的にオレは敗北した。そして次やっても結果は同じだろう。



 経験



 それが相手とオレとの明暗を分けた。

 オレはゲーセンではほとんど特定の相手としかした事がなかった、だけど相手は恐らく色々な人間と対戦して来たのだろう。

 だからある程度の対処が出来るし、オレにはそれがない。

 今回の敗戦の原因はこれだった。



 だけど負けはしたけど悔しさよりも楽しさがあった。

 自分と同じくらいの技量の持ち主との対戦。

 それはゲームという状況でしか味わえないものだった。

 いつもしてるゲームなのに相手が変わったら、また違った楽しさがそこにはあった。



「どんなヤツだ?」

 顔を知っておけば今度来た時に挑戦も簡単だ。

 それにゲームセンターで顔なじみを作るのも悪くない。

 あの腕だったら、そうそう負けないだろうからまだ台にいるだろう。

 オレは新しく缶ジュースを買うと再び戦地へと赴いた。





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