よく私が人に言われるのは時間にルーズ、それは私も自分の個性として認めてるところ。

 だからという訳じゃないんだけど、私は待ち合わせにしょっちゅう遅れる。

 私としては大体で来れればいいかなと思ってるんだけど、今日の待ち合わせ相手はそういう事を許してくれない。

 だから今日は早くに家を出たんだけど、時間にルーズな私は今度は予定の時間より大幅に早く来ちゃったんだよね、これが。



 こんな灼熱の魔手の中、約束の時間まで待っていると我が身が灰燼と化すって。

 だけど幸いにもゲームセンターという人類の英知の結晶がこの近くにはある。



「これは行くっきゃないでしょ〜」



 行けば我が生涯の宿敵に会えるかもしれない。

 今日こそ、今日こそは年上の威厳を見せる!!

 私はこの炎々と照りつける太陽の様な闘志を纏い、ゲームセンターへと歩を進めた。



「おう! こうじゃないか!」

「久しぶりだなこうちゃん、また今度対戦してくれよ」



 ゲームセンターに入り奥にある格ゲー台に向けて歩いていると、馴染みのゲーセン仲間が次々と声を掛けてくれる。

 私はそれらに一つ一つ手を上げて返しつつも、歩みを止めない、いや止めるわけには行かないのだよ!



 待ってろ、ちびすけ!



 待ってろ、リュウ様!



 格ゲー台に着くと結構な数の野次馬がいた。

 どうやらかなりの腕前の力の主が降臨してるみたいだねー。

 これは当たりか!? 奴が来てるのか!?

 私は逸る気持ちを抑える事無く、人を掻き分けてゲーセン台に辿り着いた。



 だけど予想に反して、そこにいたのは一人の少年だった。

 多分年は同じくらい、色白で美少年と言っても差し支えはない。

 そしてこの少年は何かが違った。

 何かと聞かれれば難しいけど、今まで会った事のないタイプだという事が私の人間観察で鍛えたセブンセンシズがそう告げる。

 画面には『現在八人抜き』という文字が浮かんでいる。

 そしてそれが九人になるのもすぐだろう。



 ふふん、これは久しぶりに我が血を満たすものか



 私は大ボスの様な笑みを浮かべ、席が空くのを待った。





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