『キミは誰かに似ている』
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世の中巡り合わせというものは中々上手くいかないもんだ。
今日はせっかく夏期講習が休みなのに、いつものメンバーはことごとく予定が埋まっていて、今日1日オレは1人で時間を潰すしかなかった。
だから外に飛び出したのだけど、する事がない。
やはり1人だと限界がある。
贅沢な悩みだ
ふとそんな事を思う。
この世界に来た当初は1人でいるのが苦痛じゃなかった。
でも今は1人でいるのは味気ない、そう思うようになった。
もっともそんな事を口に出せば、あいつ達にからかわれる。
そこまでいって今は自分が1人だという事を思い出す。
かなり重傷だ。
どうも1人はダメだ。色々と調子が狂ってしまう。
だから人が恋しくなったのかどうかは分からないけど、気付いたらオレは人が多くいる駅前商店街に来ていた。
「ゲーセンか、久々に入るか」
ある程度やっておかないと鈍ってしまう、それはゲームでもなんでも変わらない。
ゲームの腕が落ちると理不尽な事にオレは居候先の娘に怒られてしまう。
だからある程度の腕をキープしておかないといけないのだ。
オレは適当に空いてる台を見つけると、そこに座りコインを入れる。
画面が乱入するかどうかを聞いてくる。
オレはしばし考えて『乱入する』を選択する。
CPUだとどんなに強かろうとやはり何かが違う、どうにもチートくさい、こういうのを相手にするのはもううんざりだ。
しかしオレがいつも相手にしてるのはかなりのエース級だ。そこらに転がってるヤツでは練習にもならないのが悩みの種だ。
取りあえず長くやってれば、それなりの人に出会うだろう。
「目標…10人抜き! やってやるさ!」
大体こう言ってしまった場合、目標に到達しない事に言ってから気付くオレだった。