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 さっき彼の目は真剣だった。

 迷いがなかったし、誇りに満ち溢れていた。

 きっと彼が言う大切な人達の存在がその目をさせたんだろう。



 という事は彼にもいるのだ、何事にも代えれない人が。



「なんですか? 人の顔をじろじろと」

 だが今の彼は真剣というより、私を見て何かを考えてるかのようだった。

 それは答えが分かっているのに別の答えを探している、そういう顔だった。

「いや、あのさ………」

 彼は曖昧な返事をしてジュースを一口飲む。

 会った時に感じた敵対心はもう感じない。

「オレとお前が似てるなっと思ってさ」



 思考停止



 何? 私と誰が似てる? 何を言ってるのかしら、目の前の人は



「全く似てないわ」

「似てるんだよ、残念ながら」

「似てない」

「似てる」

「似てない」

「似てる」

「似てない!」

「じゃあもうそれでいい」

 彼が手を上げたのは私の意見を認めたというものではなく、この不毛な言い争いを止めるためのものだった。



「これからどこ行くんだ?」

 話題変換とばかりに彼が尋ねてくる。

 最低でも私は初対面の相手にこんなに馴れ馴れしくは話さない、それだけでも違う。

「カラオケ」

「お前歌うのか?」

「悪い」

「いや意外」

 心底驚いた様子の彼。

 きっと私の様子からだと想像が付かないのだろう。



 それも当然、私と彼は今日会ったばかりなのだから

 だから私の事を知らない





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