13
「お〜話が弾んでんじゃん」
戻ってきたこうの最初の一言目がこれだった。
どこが会話が弾んでるというのかしら?
まあこうの定規は人とは全然違うのは知ってるし、今更私は何も言わない。
「しかし、私の勘は当たったねーやまととシンちゃん先輩、何か相通ずるものがあると私は思ってたんだよ」
「なっ! ………」
彼の方を見ると何やら勝ち誇った顔をしている。
その顔が果てしなく私のはらわたを煮えくりかえさせる。
そしてその怒りにはこうの方にも向けられる。
こうも私の事全然分かってない!!
「行くわよこう」
「えっ? 私まだ残ってるんだけど………」
「歩きながら食べて」
私はそう告げると立ち上がって早足で駆け出そうとして、二歩目で止まる。
「先輩はどうするんですか?」
背を向けたまま、勘違い男に尋ねる。
本当は誘いたくなんかない。
一人当たりの歌う曲が少なくなるし、初対面の人とカラオケに行くなら、こうと二人でカラオケに行った方が何倍も楽しい。
でも仕方ない。私には彼を誘う理由がある。
「あー別にオレも暇だし行ってもいいな、こういいか?」
「OKですよ! やまとも誘ってるし遠慮なくどうぞ〜」
「だ、誰も誘って――」
振り返ると彼が目の前にいた。
そして私を追い越してゆく。
「オレもお前の立場だったらきっとそう言うな」
追い越しざまに彼は私だけに聞こえる様にそう言った。
その言葉は私の闘志をさらに燃え上がらせる。
悔しいし、ムカつく
自分だけ分かった様な顔しておいて
やっぱり私と彼とは違う
そう違うのだ
だから、絶対に違うという証拠を次の場所でこの男の前に叩きつけてやる!
〜 f i n 〜