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 どうやらこうはオレが思ってる以上にマイペースな人間らしい。

 今の状況で席を立ったらどうなる事やら。



 コーディネータとナチュラルの様な確執の壁がオレ達の前にそびえている。

 オレはコイツと話すつもりはない、それは向こうも同じはず。

 だったら携帯を見るかメニューでも見て1人で時間を潰すしかない。

「ねえ」

 ところが予想外にもあっちの方からオレに話しかけてきた。

 ただ面白い話ではない事が顔からは容易に想像出来た。



「どういうつもり?」

「はっ?」

 オレが聞き返してもあっちは黙ってこっちを見ている。

 どうやらあんな訳の分からない聞き方でオレには伝わってると思っているらしい。

 そんなのでお互いが分かり合ったら何も苦労はしない。

 だからオレは言ってやる。

「そんな頭の悪そうな質問で意味が通じるとか思ってないよな?」

 オレの言葉に目付きの悪い目をさらに悪くさせ、彼女は答える。

「あなたみたいな空気も行間も読めない人に分かりやすく言ってあげる

 こうに近づいてどうするつもり?」

「ハァ!?」



 なるほどオレが何か魂胆があってこうに近付いたと思ってるわけか。

 初対面の人をそんな目でしか見られないのかコイツは。

「だったらどうする?」

 人をそんな風に見た報復として、オレはわざと馬鹿にするかの様な笑みで目の前の無愛想なヤツに問い掛ける。



「……許さないから………」

「えっ?」

「こうにひどい事をしたら…あなたを許さないから…絶対に………」

 今までと同じ様に淡々と答える永森やまと。

 ただ発した言葉の中には憤怒と憎悪が入っていた。

 その姿はオレですら一瞬たじろくものだった。



 こんな姿をオレは知っている



 いつか鏡で見たオレ



 大切なものを穢すもの、壊そうとするもの、壊したもの、それに対する感情、声、表情、全部オレが見た事のあるものだった。

 その時のオレは向けている方だった。だけど今はオレは向けられている側にいる。



 謝っても許さないし、許されるとは思っていない

 大切なものを失った哀しみ、大切なものを奪った罪、それら全部の業を背負って人は生きていかなくちゃならない



 以前のオレはそこから止まっていた。恨んで、恨まれて。例えそれが誤解であろうとも。

 でも言わないと分からない。ちゃんと言葉に伝えて、そうしないと亀裂はどんどん大きくなり修復が出来なくなる

 そしてそれはまた何か大切なものを失ってしまう。

 だから言わないと駄目なんだ! 言える内に言っておかないと、取り返しがつかなくなる前に!



 それがオレがこの世界で学んだ事





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