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――――か が み。





耳元でささやくようにそう呼ばれた。



ふ、っと吐息が耳にかかる。

何かが肩から首へと突き抜けて行く。







「や……っんぅ」







それはあまりに唐突だった。







みぞおちから心臓へと、劇薬のような刺激物が駆け上がっていく衝動。

少し遅れて紅く染まる耳。





――――あ、ヤバイ。

   これはヤバイ。





あせるな、私。

取り繕え。どんな嘘でも良い。



いつもの私を偽装しろ。

いや、そんなんじゃぬるい。



擬態するんだ。





大丈夫。

こう見えて、そういうの得意なんだから。







 ピッ

 ♥102









「おおっ、100超えた」











――――ぎくり。











背筋に冷たいものが走る。

これは、まずい。







擬態した“私”の殻が、がらがらと音を立てて瓦解していく。

心が丸裸にされていく。





やだよぅ。





恥ずかしい……。

恥ずかしいよぅ……。







「かがみの髪っていいにおいするのな」

彼の指に掬われた私の髪が、さらりと落ちて行く。







 ピッ

 ♥134









やめてよぅ……っ。

避けていた答えを突きつけれちゃう、からぁ……。







「かがみ、お前ってまつ毛長い、な」





ちょ、顔、近いっ。

シン、顔、近いよぅ……っ。





もう死んじゃう。

恥ずかしくて死んじゃうよ……?









 ピッ

 ♥162











「っ!………もぅやめてよぅ………っ!」







気づいた時、私は両肩を大きく上下させ、大粒の涙をこぼしていた。

まるで、かんしゃくを起こした子供のように。





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