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―――ぱたん。

―――しゅっ。するする。





トイレの個室に入った私は、とりあえず制服を脱いではドアのフックに掛けていく。

スカーフに制服に下着、と。



学校帰りに駅のトイレで私服に着替えて遊びに行く、なんて事は何回か経験あるけど、

やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。





「えぇと…?これがこっち側?……で、こうやって回して?」

説明書を見ながら計測器を胸に装着する。





胸に回したバンドがデフォルトだと長すぎだったから、

自分の胸に合わせて、短く調整する。

これ余った部分は切らないと駄目だな。





あれ?なに?この敗北感。





まぁいいけど。

慣れたけど、こういうの。







「ああ、胸が邪魔で付けにくい!」

「………とか言ってみたいわね」





言ってて心底虚しくなったので、いそいそとバンドを装着する。

慎ましやかな私の胸は、特に装着の障害になるような事にもならず、バンドはスムースに装着完了。



泣いてないわよ。

ちょっとじわっと来たけど、別に泣いてないわよ。



むぅ。

いいから手を動せ、私。





下着、制服に、スカーフ、ハイ出来上がり、っと。

半ばムキになって、迅速に服を着る。





―――くるり。





鏡の前で横にひらりと一回転してみる。

ぱっと見、センサー巻いてるなんて解んないわね。



って、当たり前か。







見た感じの文句はないけれど、装着感としては、

余ったバンドがこすれて、ちょっとこしょばゆいかも。





………やっぱ後で切るしかないわね、これ。あぁ、ムカつくわ。





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