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「これ着けてゼーゼーハーハー言うギリギリ手前の心拍数をモニターするんだよ」



知ってる、たしか“AT値”て言ったっけ?

テレビかなんかで見て、なんとなく覚えてた知識で私は会話に合いの手を入れる。



そうそう。よく知ってるな。

うなずいてシンは続ける。





「でもって、AT値を保ったまま、できるだけ長時間止まらずに運動を続けるんだ」

「最短でも20分、……まぁ俺的には30分以上だな」





ああ、テレビでもそんな事言ってたような気がする。



そんくらい続けないと脂肪燃焼が始まらないんだっけ。

AT値って思ったよりきつくない運動量だから、長時間続けられるのよね、確か。



一番脂肪が燃えやすい運動量を、長時間行うのがミソなんだとか。

ロングスロウディスタンス、って言うやつよね?

なんか聞いただけで効果がありそうな語感だわ。うん。





「ちなみに毎日続けないと意味ないからな?」

「“継続は力なり”とはよく言ったもんで、“継続しないで手にした力”なんて長続きしないからさ」





ちぇ。解ってるわよ。





舌打ちまじりに私はふてくされた返事を返す。

しっかりと釘を刺してくるなんて、意外とアンタもやるようになったじゃない。





「………まぁ、それはそれとして、さ」

「ちょっとそれ、付けてみろよ?」





唐突に、悪戯っ子みたいな顔でシンは笑う。

話の腰をべっきりとヘシ折られた心地で、思わずきょとんとなってしまう。





それ、ってこれ?

心拍計のこと?





――はぁ?ここで付けろっての?





耳がかっと熱くなる。





何言ってんのよ。

これ指で計るやつとかじゃなくって胸に巻くタイプじゃない。

こんなところで付けられる訳ないでしょ。





「だれが“ここで”って言ったよ。トイレで付ければいいだろ」





矢継ぎ早に高速射出させた私の文句を全てを聞いてから返されたその一言にハッとして

羞恥心がこみあがってくる。



そりゃそうよね。

ここでな訳ないわよね。





………うわぁ、恥ずかしい。





やだもう、ちょっと考えれば解るのに。

なにやってんだ、私は。





「実際動いてるとこ見たいだろ?それに初期不良とかも確認しないと!」





あらら。シンってば目がきらきら輝いてるわ。

ハイハイ。結局アンタ、自分が機械いじってみたいだけなのね。



そういうところが、やっぱし年相応の男の子なのよね。

でも、シンのそういうところ、嫌いじゃない。

変に大人ぶらないところ、嫌いじゃない。





……はぁ。

ため息一発。





―――まぁいいわ。私も買ったものはその場で開けて試してみたいタイプだし。







「ハイハイ。着けて来るから、イイコにして待ってなさいよ?」





そう苦笑して席を立つ。

わくわく、と子犬の様な顔してうなずくシンを背にトイレに向かう。





あぁ、しかし我ながら思う。

私って奴は、ホントに押しに弱い。

育ってきた環境のせいなのか、それとも生まれもってのものなのか。





体型は勿論のこと、こっちの部分もなんとかしたいわぁ。





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