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「どうしたの?」
他の全員が帰っても一向に帰る様子を見せないみゆきを不思議と思い、かがみは声を掛ける。
「あっ、いえ、その、当日の事でお話が」
「えっ、何?」
「あのー遠足当日は私にもフォローをさせてもらえませんか?」
「でも………」
各委員長の遠足での仕事は割り当てられた役割と自分のクラスをまとめるという事になり、かがみは遠足全体の統括係になっていた。
「だって、自分のクラスもあるでしょ?
こっちは先生達もフォローしてくれるはずだし大丈夫よ」
かがみはみゆきの申し出をやんわりと断る。
かがみとしては言い出しっぺの責任がある為、なるべく他人に迷惑を掛けたくなかった。
「そんな事はないはずです!
一人でやるとなると柊さんの遠足の自由時間はほぼないかと」
「うっ………」
みゆきの指摘にかがみは言葉を詰まらせる。
こういう立場の任についたことがあるならば、かがみの担当する分が明らかにオーバーワークなのは分かる。
そして言い出した責任上、他人に迷惑を掛けたくない。
短い時間だが、みゆきはかがみという少女がそういう優しさを持っているのだと感じていた。
「でも、あなたの自由時間もなくなるわよ?」
みゆきを相手に誤魔化しきれないと踏んだかがみは、別の手段でみゆきの説得に掛かる。
「二人でやれば少しは時間が取れるはずです
それに二人でやった方がまだ楽しいかと」
「……変わってるわねー」
皮肉な言葉を掛けてくるが、これがかがみなりのお礼の仕方だということは、
少し照れくさげに髪を遊ばせながら、かがみの顔を見れば誰にだって分かる。
その顔は普通にお礼を言われるよりも、何倍も見る価値がある顔。
しっかり者の顔と今の様に年端もいかない少女の顔。
だがみゆきはかがみが表裏が激しい人物とは思わなかった。
それだけかがみの立ち振る舞いは自然で無理がないものだった。
そしてそれを無意識にしているからこそ、かがみにはやはりツンデレの要素が大いにあった。