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「というわけでだな、高校に入って初めての遠足だが、スケジュールやしおりは学級委員の皆で決めてもらう」
『えー!?』
今日初めて会ったとは思えない程息の合った声を上げる1年生委員長の面々。
「文句を言うな。高校はもう義務教育じゃないんだぞ
少しくらいは自分達で決めろ」
抗議の声をものともせずに、桜庭ひかるは淡々と言い放つ。
県内でも名の知れた進学校だけあって、生徒達に求められるものも高いといえる。
「んじゃ、私はちょっと休憩してくるからその間に大体の事は決めとくように」
それだけ言うとひかるはいそいそと出て行った。
もっとも仕切るのが面倒臭いというひかるの意志も多分に含まれているのだが、それは生徒達が知る術もない
何はともあれ、教室に残されたのは未だ自己紹介も済んでいない、各学級委員長達はいきなり厳しい状況に追い込まれた。
当たり前というかなんと言うか、会議室は静寂に包まれていた。
時々見知った顔同士で時々会話はするものの、音頭を取るものはいない。
恐らくここで仕切ろうもんなら、優等生とか、鬱陶しい奴とかレッテルを貼られるのを恐れての事もあるのであろう。
かといってここで延々と静寂に身を委ねるのは望むところではない。
プリントを持ってきた少女かがみもその1人だ。
明らかな時間の浪費はかがみが嫌いとするものだ。
その上、無二の存在の双子の妹を待たせているのだ。
これ以上の時間の無駄はなんとしても避けたかった
かがみは溜め息を1つすると立ち上がる。
どうにも貧乏くじを引く性質らしい
「いいですか?」
手を上げて一際大きく声を上げてかがみは立ち上がる。そしてそのまま黒板の方へと進み、文字を書いていく。
「各自が役割を分担するのはどうでしょう?
例えばしおり係、時間配分係、そしてそれを統括する係みたいに」
時間が惜しい為、かがみは書きながら提案をしていく。
「でも、それだとクラス委員の数に対して係が少なくない?」
「それならもっと細かくする? しおりとか手間かかるし」
「絵とか得意だし、表紙なら書くよ」
かがみが書き終わると同時に、意見が飛び出す。
挙手をしてからではなく、思い思いに話す為やや統制には欠けるが、会議が動いたのは事実だった。