『優等生2人』
1
1人の少女が早足に廊下を駆け抜けていく。
「た、確か会議室はこの階、のはずですよね?」
入学してから少したって行なわれたオリエンテーションの記憶を元に、
少女はずり落ちそうになっている眼鏡を直しながらも1つずつ教室を確認する。
今日は高校に入って初めての委員会、しかしそれに遅れそうになっている、といえば少女が慌てている理由が分かるだろう。
それでも決して廊下を走ろうとしないのは、少女が周りから優等生と認識されるほどの性格によるものだろう。
遅れそうになっている理由も決して委員会を忘れていたというものではなく、授業で引っ掛っていたところを先生に質問していたからだ。
「会議準備室、あっ、という事は………、きゃっ!?」
「うわっ!?」
少女の数少ない欠点の1つが、集中しすぎると周りに対する注意を怠ってしまう事だ。
不幸中の幸いは教室確認の為に歩行速度を緩めていたというところだろうか。
宙を舞うプリント、絵に描いた様な激突劇といえる。
「す、す、すみません!」
「ううん、こっちこそ、前を見てなくて………」
ぶつかった2人はお互い謝りつつもプリントを拾う。
プリントの枚数はそれほど多くはなく、1分も立たぬうちに回収が終る。
「あ、あの、学級委員の方ですか?」
最後のプリントを相手に渡しながら少女は尋ねる。
少女がそう判断した理由は、プリントに書かれていた内容が1年生の遠足についての事だったらからだ。
「そうだけど………、もしかしてあなたも?」
「は、はい! 遅れそうになると思い、急いで来たら………」
「それなら大丈夫、まだ半分くらいしか来てないわよ
大方、会議室の場所が分からなくて迷ってるんじゃない?」
プリントを持っていた少女は片方の手をひらひらさせながら答える。
決してふざけていないながらも少女の砕けた物言いに眼鏡の少女は、緊張が解けると同時にこの少女に好意を抱いていた。
「どうしたの?」
「いえ、あなたの様な方が同じ学級委員だととても心強いと思いまして」
「そんな事ないわよ。でもまあ、仲良くやりましょうね」
微笑み合う2人。
それは今さっき出会ったとは思えないほどに自然な笑み。
「高良みゆきです、よろしくお願いします」
「柊かがみよ、こっちこそよろしくね」
この2人の出会いから全てが始まる