「なんか言いたそうだな?」

「えっ? そんなことないですよ〜☆」

 あきらは営業用スマイルでこっちの詰問を受け流す。

 このスマイルがでたら何を言っても口を割らないだろう。

 ついつい自分より年下の中学生だと思って見てしまうけど、さすがに芸能人だけあって手強い。



「そっちはどうなんだよ? それ以外は渡さないのか?」

 なら、こっちはフィールドを有利な場所に変えるしかない。

「う〜ん、別に後は友チョコくらいですね〜」

 どうやら、本当にこれといった人物はいないらしく、予想よりも真面目な答えが返ってくる。



「というかさー」

「ん?」

「もう、当分チョコは見たくない」

 ラッピング途中のチョコを置き机に突っ伏すあきら。

 完全にアイドルモードから素のモードになってしまった。

 さすがにプライドがあるとはいえ、この大量のチョコには辟易してるようだ。



「だーもう、なんでバレンタインはチョコを渡す日になったんだよー!?

 こんなのお菓子会社の陰謀なのにさー!」

 といって机をバンバン叩くあきら。

 さすがの芸能人といってもそこはまだ中学生、限界らしく壊れるあきら。

「まあ、そう言うなよ」

「うるさーい、そりゃ貰う方は気楽でいいけど…こっちは誕生日なんだぞー!

 なんで他人にあげなきゃならないんだよー!?」

 なおもわめき続けるあきら。

 なるほど、確かにこの日に誕生日は損だな。



「もう、バカー! バレンタインのバカー! 事務所のバカー! こんな日に狙って生んだ両親のバカー!

 はぁはぁはぁはぁはぁはぁ!」

 肩で息するあきら。

 本人はストレスを解消してるだけだろうが、

どこかその行動には人を引き付ける何かがあるのはアイドルとしては立派な才能なんだろう。

「さて、気もすんだところで続きをお願いできるか?」

「は〜い☆」

 再びアイドルモードになったあきらはラッピングを続ける。

 そんな切り替わりの早さにオレは苦笑する。



 アイドルというのは中々難しいらしい





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