やはり地道な努力をすれば報われる。

 それを教えてくれる作業だった。

 社会が本当かどうかは知んない。

 取りあえず、世の中にはそんな言葉があるということを実感できる作業だった。



「最後だーっ!!」

 わたしは百個目のチョコのリボンを結び終える。

「おつかれ」

 そう言って感動の余韻もなく、最後の一個をひょいっと、あっさりダンボールにいれるシン『先生』。

「空気読め〜」

「よく言われる」

 全然悪びれるどころか、笑って答えるシン『先生』。



「さて行くかな」

「あっ、はい………」

 そっか、終わったらシン『先生』行っちゃうんだった………。

 もう少し長引かせれば良かったかな?

「明日のイベント頑張れよ」

「は〜い…待った、待った〜!!」

 部屋から出ようとするシン『先生』を呼び止めるわたし。

 疲れのせいでそのままスルーしかけた………。



「はい、これわたしからの。

 あっ、バイト代とは別ですから」

「随分安上がりだな」

 チョコ貰って一言目がそれかい!

「それは、『アイドル』としてじゃなくて、『中学生』小神あきら個人として渡すからそんなんです!!」

「あっ、そりゃ悪かったな」

「いいですよ☆友チョコですから☆」

「笑顔で言うなよ………」

「さっきのお返しです」

 わざとらしく天を見上げるシン『先生』、笑うわたし。



 中々貴重な友達といえる年上の人…というかこの人だけかもしれない。



「おっと、オレも忘れてた。これはオレからな」

「へっ?」

 シン『先生』はわたしの手に小さな箱を渡す。

 ……これなに?

 わたしは顔に『?』、頭上にも『?』を浮かべてるのに、シン『先生』は答えることもなく、ドアへと向う。

 ちょ、ちょ、ちょ、これなんだよー!?



 そしてドアに着くとくるりとこっちを向く。



「誕生日おめでとう、あきら」



 シン『先生』はわたしの顔を見ると満足気に頷いて部屋を出て行った。





 しまったー相手が素人と思って油断した!



 顔を擦るけど、全てが後の祭り。



 シン『先生』にあんな顔を見られた。なんといっていいか分からないわたしの顔を。





〜 f i n 〜   







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