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しまったー! やりすぎた!
わたしは心の中で手を頭に乗せる。
思わず反射的に手を叩いてしまったが、あっち側のことを考えれば当然の行動だった。
すでにもう三時間くらいは待たせてる。
待ちが嫌なのは自分が一番知ってるのに。
ちらりっとあっちに目をやると心なしか凹んでる。
あの人ああ見えてナイーブだからな〜
わたしは気づかれないように心の中で溜め息を吐く。
シン『先生』とは去年の夏に会ったから、半年の付き合い。
まだ数えるほどしか会ってないけど、それなりに性格は分かっている。
見た目と口調とは裏腹にシン『先生』は繊細なのだ。
ちなみになんで『先生』かというと、何度か勉強を見て貰ってる縁からわたしが勝手にそう呼んでる。
「せんせ〜い、先生はバレンタインはどうなの?」
わたしは明るく質問する。
尻拭いは自分でしなければならない。
それがわたしが子供の時から生きてきた業界なのだ。それにいつまでも落ち込んでいられては正直困る。
今この部屋にはわたしとシン『先生』二人しかいないのだ。
空気が悪い中、チョコをもくもくとラッピングするなんて、拷問以外の何物でもない。
「……そうだな…くれそうなのは何人か心当たりがあるんだけど」
シン『先生』はしばらくこっちをじっと見てから、考える。
きっとあっちも自分のせいって思ってるから、この話にのってくれた、と思いたい。
「うわ〜シン先生って結構モテるんだ」
「お前なぁー」
シン『先生』はわざと嫌そうな顔でこっちを見る。
実際にシン『先生』はモテるだろう。ルックスもいいし、面倒見もいい。
それにさっきいった繊細さが母性本能をくすぐる。
中学生のわたしでもくすぐられるのだから間違いない。
ただこの人は初対面の印象がとにかく悪い。
それさえクリアーできれば………ってことは何人かがいるってことか…なんか知らないけど、少し悔しい。
「それにそいつらはそういうんじゃないんだ」
少し照れ臭そうに笑うシン『先生』。
時々話しにでてくる、性別を越えた親友。
わたしも数人ほどはそんな感じのがいる、悪友ともいえるかもしれないけど………。
でもまあバレンタインにチョコを渡すんだから、シン『先生』が思ってるの関係とはちょっと違う気がするけど………。
気づいてないんだろうな〜。この人、こういうことに関しては超絶的にダメっぽいし。
大変ですね
わたしは未だ会ったことのない人達に慰めの言葉を掛けるのだった。