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「これで良かったのかな」
携帯に映し出された少女にオレは話しかける。
あの後こなたが帰ってきて、オレはゆたかの看病係をお役御免になった。
拒否をしても良かった、ただこっちを見てくるゆたかの姿がオレを頷かせてしまった。
『お兄ちゃん』
被って見えた。今はいない妹とゆたかが
「分かってるさ」
妹は妹で、ゆたかはゆたかだ
被せて見るなんてのはどっちにも失礼だし、オレが一番許せない。
ただそれを徹底できるか………、正直言うと自信はない
でもそれくらいの事を自分に課したい、今のオレは幸福過ぎるんだから少しくらいは何かを背負うべきだ
元の世界でやったオレの業とを考えるとこれでもまだ全然軽い
とんとん
「シンお兄ちゃん、晩御飯できたってこなたお姉ちゃんが」
ドア越しから聞こえてくるゆたかの声。
まさか本当にその呼び方で行く気か?
まああれだけの事を言ったからゆたかの方も引き下がれないのかもしれない。
ならしばらくはこの兄妹ごっこに付き合わないと駄目だろう。焚きつけたのはオレなんだから。
「分かった、すぐ行く」
答えてから携帯を机の中にしまい、立ち上がる。
恐らくゆたかはご飯の時もオレをさっきの呼び名で呼ぶだろう。
そしてきっとこなたは鬼の首を取った勢いでオレをからかい、そうじろうさんはきっと同じ趣向だ、なんだといって涙を流す事だろう。
今日の泉家は一段と騒がしくなりそうだ。
〜 f i n 〜