『Second contact』
〜ゆたか編〜
1
うっかりしてたなー。せっかくあんないい人に出会えたのに名前を聞き忘れるなんて。
「はあ」
自分の迂闊さに思わず溜め息が出てしまいます。
でもさっきの人はわたしのよろしくお願いしますって言葉に頷いてくれた。
だからきっと絶対にまた会えるはずです!
そしてその時にはこのハンカチをちゃんと返さないと
それが果たしていつになるのか………
その時、わたしの頭に頼りになる従姉の顔が思い浮かびます。
こなたお姉ちゃんなら学校で次に会える日を知ってるかも。なにしろ今わたしが受験してきた陵桜高校の在校生ですから
ぶろろー
これからの予定をわたしは決めると同時に駅までのバスがやってきました。
以前のわたしだったら、気分が悪くなった日はもう家に帰ってたのに
自分の行動力にびっくりです。これもあの女の人のお陰かな?
わたしはいつもより少しだけ、軽い足取りでバスのステップに足を掛けました。
「はい、泉ですけど」
泉家のインターホンを押して、返ってきた声は男の人の声でした。
でもおじさんではありません。
おじさんじゃなくて、男の人というと泉家にはもう一人しかいません。
アスカ・シンさん
おじさんのお知り合いの息子さんで現在は泉家に住んでいます。
半年ほど前に一度、会ったことがあるんですが、少し、ほんの少し、怖い人です。
最後は笑って別れることができたものの、わたしはなんとなくアスカさんに苦手意識をもってしまいました。
確かに口調は荒いですけど、悪い人では決してないのに………。
どことなく人を信じることをやめてしまったあの瞳、それが原因でした。
そんな人がインターホンに出たということは、まさか二人は留守?
「え、あ、あの、ゆたかです! 小早川ゆたか!!」
でももうこのまま黙って帰ることはできません。わたしは自分を奮い立たせるように無駄に大きな声を上げて答えました。
『ああ、ゆたかか。待ってろ、今開けるから』
「えっ? は、はい」
予想とは違った、明るい返答。
今日はなにかいいことがあったのでしょうか?
それともそう聞こえたのはわたしの気のせいなんでしょうか?
結論から言うとその両方ともハズレでした。
変わったんです、アスカ・シンという人は
それを知った、シン・アスカとのセカンドコンタクト
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