『闇の中の光』





 夕食が終わって、かがみに言いつけられてた明日までの日本史の課題をしなきゃと思いつつも、

リビングでだらだらしている時だった。

「月はでているか?」

「ハア?」

 いきなりこなたがわけの分からないことを言い放つ。

 まあこなたの場合大概わけが分からないことを言ってくるけど。

「あっ、今日は月食だったね!」

 ネタなのかマジなのかリアクションを考えてるオレの横で、ゆたかが嬉しそうに答える。

 そしてどうやらそれが答えだったらしく、こなたは満足そうに頷く。

「月食ねー」

「ん? シンは興味なさげ? というか月食を知らない?」

「それくらいは知ってる」

 いくらオレがこの世界に元からいなかったとはいえ、その事象くらいは当然知っている。

 というかこなたはオレに常識がないと、思っている節が多く見られる。バカにするなと言いたい。

「なんていうか神秘的っていう響きがするよね?」

「あ、ああ、まあ…そう、だな」

 ゆたかのいかにもな質問に、オレはお茶を濁す。

 ゆたかには悪いけど、オレにとって月は人がすでに住める場所という認識だからそんな想いは抱けない。

 逆に苦い記憶が浮かんでくるばかりだ。



「こんな住宅街でも見れるのかなー?」

「う〜ん星とかとはまた違うから大丈夫とは思うけどねー」

 とはいえ、ゆたかがすっごく見たがってるっぽいしな。わざわざ雰囲気をなぎ払うことはしたくない。

 それよりも兄(代わり)としてはむしろ願いを叶えてあげるべきだろう





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