『大事な気持ち』
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『かんぱーい! お疲れさま』
今日はみなみちゃんの家で期末試験の打ち上げと、そして
「……ゆたかの誕生日に」
「かんーぱーい」
わたしのお誕生日会なのです。
「ありがとうみなみちゃん、それと田村さんもわざわざ来てくれて」
「……本当に良かったの、私の家で?」
「それに泉先輩とアスカ先輩も誘わなかったの?」
二人の質問にわたしは頷きます。
お姉ちゃんもお兄ちゃんももうすぐ受験。
今がラストスパートの時期なのに、私の誕生日を祝うのに時間を費やしてほしくありません。
それに
「お兄ちゃん、わたしの誕生日知らないから」
「ウソッ!?」
田村さんだけじゃなく、みなみちゃんも驚きの顔をこっちに向けてきます。
自分からわざわざ言うのも変だし、お兄ちゃんもべつだん尋ねてこないまま、なんとなくこの日を迎えてしまいました。
「……でもそれでシン先輩がゆたかを嫌ってるってわけじゃないから」
「うん」
それは本当にみなみちゃんの言う通りです。
お兄ちゃんは血の繋がりもないわたしを、本当の妹の様に目を掛けてくれています。
「でも教えなくて正解かも。アスカ先輩のことだから小早川さんの誕生日会はビビるくらいに盛大にやりそうだし」
田村さんの言葉にわたしもみなみちゃんも噴出します。
本当にそれをやりそうなのが簡単に浮かんできたから
想いは知ってるから、ちゃんと伝わってきてるから
だから祝われなくても平気なんです