「そろそろ行くか」

「はい」

 休んだおかげで体調はもうだいぶ良くなっていました。

 本当はもう少しだけこうしていたいのですが、これ以上ここにいると帰りが遅くなってしまいます



「お兄ちゃん」

「ん?」

「お兄ちゃんも今嬉しいですか?」

 わたしの言葉を受けて、お兄ちゃんは少しだけ空を見上げます。

 それは困ってるというより、言葉を探しているという感じでした。

 あるいは亡くなった妹さんに許可を取っているのかもしれません。



「ああ、そうだな」

 そう言うとお兄ちゃんは笑って、わたしの頭に手を置きます。

 まるで年の離れた妹の様に、……実際は二歳しか離れていませんけど………

 とはいえ嬉しいと思うのはわたしも同じです



 ただ完全に『妹』扱いになってるのが、少し残念ですけど



「ほら、早く乗れ」

 やっぱりお兄ちゃんはとっても鈍い人です

 でも鋭すぎたら、わたしの方が困ってしまいます



「うん!」

 わたしはそんな複雑な想いをヘルメットの中に押し込め、お兄ちゃんの後ろに座りました。





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