『義兄と妹』





 今わたしの手元にはA4用紙の紙があります。

 そこに描かれているのは、県は一緒のところですが、名前は聞いたことがないところの地図です。



「……ここは、結構遠い場所」

 地図に描かれた場所を知っているのか、親友のみなみちゃんが傍から見ると分らない位に眉を顰めます。

「そうなの?」

「そうなんだよー。本当はお兄ちゃんが取りに行くはずだったんだけど、急に用事ができたって」

 地図を持ってきた田村さんが申し訳なさそうに答えます。



 ほんの少し前に、わたしは田村さんにお姉ちゃんの誕生日にプレゼントする絵本を製本してもらう様に頼んでいました。

 でも田村さんのお兄さんは、都合が悪くて受け取りにいけないそうです。



「どうしよっか? わたしがなんとか根性を出せば、プレゼントを渡す日の夜には泉先輩の家に届けられると思うけど、確証はないし………」

 根性を出せばというのは、田村さんは趣味でやってる本の原稿の締め切りが迫っているそうです。

 ただでさえ今回のことで田村さんには助けてもらってるし、これ以上迷惑を掛けたくありません。

 支えてばっかりいられたら、友達とは言えないから



「うん、わたしが今度のお休みの日に取りに行くよ」

「ごめんね、ほんとにごめん」

「……ついて行こうか?」

「大丈夫だよ、ありがとう」

 みなみちゃんの申し出にわたしは首を横に振ります。

 みなみちゃんはその日、ピアノの発表会があります。

 わたしの為にそれを潰して欲しくないです。

 みなみちゃんが頑張って練習してたのを知っているから





別の日常を見る         進める