『ずっと』
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ジリリリリリリン!!!
今だともう珍しくなっちゃってる黒電話、それが鳴り響く。
そして電話の近くにいたのはわたし。
この電話にはわたしが出なきゃいけない気がする。
理由は分からないけど、そんなことを思ったの。
「はい、柊です」
『泉ですけど、つかさ?』
「うん、そうだよ」
お姉ちゃんじゃなくてわたしに用があるのはきっとわたしの恋人、シンちゃんのこと。
『ねえ明日、なんの日か知ってる、……よね………?』
「……うん、知ってる」
明日は六月十五日、その日はシンちゃんの家族が亡くなった日
『明日さーなんとかシンの側にいられないかな?』
「シンちゃんそんなに悪いの………?」
その日になると、シンちゃんは家族のことを思い出して苦しんじゃう。
わたしはその時のシンちゃんを見たことがないけど、去年のこの日はいきなり遊べなくなってお姉ちゃんと二人でびっくりしたの。
『今のところは普段と変わらないけど………、明日は全員家から出て行ってくれって頭を下げられたよ』
「……そうなんだ」
普段家族として接してるこなちゃんを家に出そうとするなんてよっぽど。
それだけシンちゃんの心の傷の深さを感じる。
『つかさも専門学校があるってのは分かるけどさ、なんとかならないかなー?』
「うん、行く」
わたしは珍しく即答する。
ずっと引っかかってた。
去年までのわたしはシンちゃんのことを全く知らなかった。
だから、シンちゃんと遊べなくなった日もただ、残念だな、としか思ってなかった。
でも、その後にシンちゃんからシンちゃんの過去を聞いた。
そしてすっごく後悔したの。
好きな人が苦しんでる時に自分はなんて勝手で能天気なことを考えてたんだ、って。
わたしがその場にいたとしても、なにもできなかったかもしれない。
でもそばにいれば、なにかできたかもしれないのに
『ほんと!? ありがとう!』
自分の様に喜ぶこなちゃん。
今でもこなちゃんはシンを大切な人と想っている
ちょっと前までこなちゃんとはシンちゃんを取り合う恋のライバルだった。
でもわたしとシンちゃんが付き合うことになると、こなちゃんは前と同じようにわたしと親友として付き合ってくれて、
シンちゃんとの仲を応援をしてくれている。
こなちゃんだけじゃなくて、お姉ちゃんやゆきちゃんも。
わたしはその人たちの分まで、シンちゃんを愛して側にいる。
それが、わたしが恋のライバルの人たちに対する、できるたった一つのことだから。