あの人がこっちに向かって歩いてくる。

 しかもわたしに向かって、もう心臓がバクバクいってるよ〜!



「つかさ、宿題やって来たか?」

「うん、もちのロンロン♪」

「へ〜こりゃ今日は雪だな」

「はうっ、シンちゃん、ひどいよ〜」

 いつもどうりの日常会話。でも、今はいつもと違って二人きり…他愛ないおしゃべりしながら歩いていると、

鼻のうえに白い小さなものがのっかてきたの 。



「……雪か………」

「わぁ〜ホントだ! めずらしいね〜!」

「珍しいのか?」

「この時期では凄く珍しいよ〜。なかなかホワイトクリスマスなんてないんだよね」

「じゃあこれもつかさのせいか〜」

「え〜わたしのせいなの?」



 わたしがそういうとあの人が笑ったから、わたしもつられて笑ちゃった 。

 でもあの人の笑みはどことなく、寂しげで、悲しそうで…だけど、理由は聞けなかった………。

 あの人の目がわたしに聞かれるのを拒んでいたから………。

 あの人は一度ゆっくりと目をつぶった。まるで何かを振り払うかのように………。

「……つかさ、そろそろ行こうぜ。遅刻しちまう」

 言葉を出した時は、わたしのよく知っているあの人のいつもの笑顔だった。

「うん!」

 頷くとわたしはどさくさにまぎれてあの人の手を握った。

 あの人は最初不思議そうな顔をしたけど、すぐに微笑んでわたしの手を握り返してくれた。

 今のわたしだと、なんの力になれないから、これが精一杯………。



 でも、いつか………



 一歩前進………かな?





〜 f i n 〜   






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