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そしてデートの日。
オレはいつもみたいに少し早めに待ち合わせの場所に来ていた。
ひょっとしてつかさは来てくれない、そんな不安を抱きながら。
時計を見ると15分前。
つかさが来るのはいつも集合時間ぴったし。
だけど今日は早く来るかもしれないし、遅く来るかもしれない。
というかその可能性の方が高い。
ただメールではいつものつかさだった。
いつもみたいに打ち間違いが多いメールだった。
そんなのでいつもかどうかなんて分かれば苦労しない。
やっぱり動揺している。そりゃ嫌になるくらいに昨日もほどんど寝られなかったし。
こんなに緊張するデートは初めてだ。そしてきっと最後だろう。
つかさが姿を現したのはいつもと同じで時間ぴったし。
「シンちゃ〜ん!」
ぶんぶんと手を振ってこっちに駆けて来るつかさ。
いつもとまるで変わらないみたいだけど………?
「え〜と最初はどこに行くの?」
「えっ?」
そしてこっちにやってきたつかさの普通すぎる第一声に、オレは思わず間抜けな声を挙げる。
「……つかさ、DVD見たか?」
「えっ、う、うん」
「えっと感想とかは?」
「今言うの?」
「当たり前だろ………」
オレは脱力感に苛まれつつもつかさに抗議する。
デートの最後までお預けなんて、悶々としすぎてデートを楽しめるわけがない。
というか、つかさは最後でよかったのか………?
「じ、じゃあ…シンちゃん、あのDVDの話って本当?」
「ああ、はしょってはいるけど間違ってない、事実だ」
「でもシンちゃんって、別の世界から来たんだよね?」
「こっちの世界になんで伝わってるのかは知らない。しかも『アニメ』でな」
そうオレはちゃんと意識はここにあるし、子供の時の記憶もちゃんとある。
ただつかさからみたらオレは『アニメ』のキャラクター。
そんなオレをつかさは―――
「お疲れさま」
今度は感覚じゃなかった。
オレはつかさに抱きしめられていた。
「シンちゃん、すっごくがんばってたよ、つらいことがあっても、悲しいことがあっても」
つかさがゆっくりとオレの背中をなでる。
あまりの暖かさにオレは堰を切った様に話、いや懺悔していた。
「でも、そのためにオレは人を殺めた、沢山の人を」
「うん」
「それでも、守れなかった家族と一緒だ、なにも、あの娘も親友も」
オレの言葉にもつかさは優しく耳を傾けてくれていた。
本当だったら嫌悪されてもおかしくないはずなのに
「シンちゃんがそのことで苦しんでるのは知ってるよ、ずっと見てきたもん」
つかさは母さんのように頭をなでてくれた。
オレはつかさに包まれていた
「変わらないよ」
「……つかさ」
「あれを見ても、わたしの中のシンちゃんは全く変わってないよ」
顔を赤らめて次にオレを見てきたつかさの顔は、もう年相応というよりは女の子のかおだった。
「わたしの大好きなシンちゃんとなにも変わらないよ」
そしてつかさは目を瞑る。
やっぱりつかさは強かった
それなのにオレはつかさの気持ちを確かめるようなことをしてしまった。
でもつかさはきっと、オレの弱さも分かっているんだろう
その上でオレと一緒にいてくれるということを選んだ。
「ありがとう」
こんな言葉だけじゃ、とても足りないけど
これから絶対に返していってみせる
オレはそう誓ってつかさと唇を重ねた。
〜 F i n 〜