『秘密』
1
なんだろう、音が聞こえる
音楽とか、そんなんじゃない
もっと、こう………、ベルみたいな?
「つかさ、起きろ、時間だぞ
つ・か・さ」
「ひ、ひゃう!?」
眠っていた意識が一気に目覚める。
別にいきなり耳元で囁かれたからっていうだけじゃないんだよ。
わたしの大好きな人の声がすっごく近くで聞こえたから。
「……シンちゃん、ずるいよ〜そんな近くから………」
「こうでもしないと、起きないだろ?」
悪びれる様子もせずにそう答えたのは、わたしの恋人のシン・アスカこと、シンちゃん。
紅い瞳が特徴の二枚目、性格はすっごく優しくて、とっても頼れるんだよ♪
「じゃあ、朝ごはんできたら起こしに来るね」
「ああ、頼むな」
そう言ってシンちゃんは再び夢の世界へ戻っていく。
シンちゃんは今日もお仕事、わざわざちょっと早く起きてわたしを起こしてくれる。
シンちゃんの家に泊まった次の日の朝ごはんを作るのはわたしの役目、会社で食べる昼食のお弁当もわたしの役目。
でも全然大変じゃないんだよ、シンちゃんのモーニングコールで起きれるんだから、むしろとっても幸せ
それにね、大好きな人のためだから全然苦にならない、それどころか毎日でも作ってあげたい♪
早くシンちゃんと一緒になりたいなあ
でも、きっとそんな日ももうすぐだよね?
その日を夢見て今日もわたしはお嫁さんの実戦練習
「うわー………」
キッチンに入って、思わず呆然の声を上げちゃった
だってキッチンもリビングも、ものすごく散らかってたから
いつもはこんなに散らかってないよ、普段は本当に綺麗でわたしが掃除するところがないくらいなんだよ
こんなに散らかってるのは、昨日みんなでわたしとお姉ちゃんの誕生日パーティをしたから
みんなはわたしとシンちゃんに気を遣って少しだけ早く帰ったんだけど、
わたしもシンちゃんもお酒が入ってたし、とってもロマンチックな雰囲気になってたから、片付けまで手が回らなかったの
でもまさかこんなに散らかってるなんて………
お酒の力って怖いねー
「はっ、いけない、いけない!」
呆然としてる場合じゃないよね、取りあえずごはんを作って、その後に掃除かな?
日頃のわたしと違って、順序よく物事を決めていく。
これもシンちゃんのモーニングコールのお陰
「照れちゃうね」
わたしはいつもの場所からフライパンを取り出した。