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旅館に戻ったオレ達はやや気恥ずかしい状態になっていたが、そこはオレとつかさの仲。
すぐに関係は元に戻った。
そして晩飯、温泉を楽しみ、オレ達は部屋に戻ってきていた。
「うっ………」
「!!」
部屋に入った瞬間にオレは小さく呻き、つかさは口に手を置いて小さく驚きの声を出す。
ここはオレとつかさの2人部屋、だが敷かれた布団の数は1つ。
誰が1つにしろと言ったぁぁー!? いや、2つとも言ってないけど………。
つかさの方を見ると、真っ赤にしてモジモジしてる。
そんな姿も可愛い…って思ってる場合じゃない!! どうするこの状況!?
『布団をもう1つ敷こう』というヘタレ発言は却下、これ以上つかさに対するオレの株が下がる行動はすべきじゃない。
だけど、『一緒に寝ようぜ』と言うのも今日のオレの失態加減からしてみると、マイナス発言な気もするし…どうするオレ!?
「……困っちゃたね…でも、もう布団敷くのもめんどくさいし…シンちゃんがいいんだったら………」
逡巡しているオレに対してつかさの助け舟発言。
さすがにこうまで言われたら、空気読めないと言われてるオレでも分かる。
「あ、ああ、つ、つかさがいいんだったら………。
オ、オレ喉渇いたから、飲み物買ってくるな!」
オレはそう言うとつかさの返事を聞かずに部屋を出た。
ヘタレと罵るなら罵ればいい!! これくらいの罵声なんてもう慣れるほどに聞き飽きたさ!!
深呼吸を1つ、深呼吸を2つ。
もう1度同じ動作。
結局飲み物を買いに行くなんて、わずかばかりの時間稼ぎにしかならず、オレは部屋の前で固まっていた。
情けないぞシン・アスカ!! つかさにあんな事まで言わせたんだ、このまま恥をかかすつもりか!?
オレは自分を叱咤激励する。
「そ、そんなこと、そんなことさせるもんかぁぁ!!」
咆哮と共にオレはドアを開ける。
しかし部屋に入ったのに無反応。まさか遅いから怒ったとか? いや、まだ出て行って5分位しか経っていない。
耳をすますと呼吸の音が聞こえる。
まさか………。
そしてオレは襖を開ける、そこに予想通りの光景。
「すーすー」
この場合オレは、ホッとすべきなのか? がっかりすべきなのか?
「はー」
取りあえずの溜め息、理由などない。
ただつかさの幸せそうな寝顔を見てると、どうでもよくなってきていた。
オレはつかさのために買ってきたメロンソーダを冷蔵庫に入れてから、電気を消した。
そして布団に入り込むとつかさを抱きしめる。
起きたらつかさはどんな反応をするだろう?
また真っ赤になって慌てるか、それともオレに笑顔を見せてくれるのか?
どっちにしろ明日も楽しい事になるのは間違いない。
オレはつかさの暖かい体温を感じながら、そんな事を考えていた。
〜 F i n 〜