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「シンちゃん、わたしね、か、買い物に行きたいんだけど………」
「行けばいいじゃないか?」
「そ、そうなんだけどね、そ、その、それが、ご、G.W.に、い、行きたいんだけど………」
「ああ、かがみと行くのか?」
「そ、そうじゃなくって〜」
再びつかさの瞳が涙でいっぱいになる。
その顔は『どうしてわかってくれないの〜』と書いてあるが、別にイジワルをする気はない。
ただ本当につかさの言いたいことが分からないだけだ。
「うっ!」
突き刺さる視線に振り向くと、そこには『お前、空気読め』な顔をしている少女達。
なんだよ! オレが何をした!? 一体何をすればいいんだよ!?
オレをなんだと思ってるニュータイプか!? イノベーターか!? 日頃『空気を読めない男』って罵ってるのはお前達だろ!?
「シ、シンちゃん………」
もう少しで雄叫びをあげそうになるところをつかさの声で我に返る。
……こんなことで、冷静さを失ってどうするんだよ
こんな平和な世界の少女の小さな悩みで
こんなオレの力なんかで解決できそうな悩みで
「つかさ、言ってみろ」
オレはつかさに笑いかける。
効果があったのか、つかさは呆けた表情をして、その後、笑顔で頷く。
「シンちゃん、G.W.の初日、買い物に行かない?」
それは肩すかしをくらうくらい簡単なもので
それこそ今までオレが経験してきたものに比べるとはるかに楽勝で
でも断れないもの
「ああ、行こうぜ」
頭に手を置くと、つかさはますます顔をほころばせた。
〜 f i n 〜