「……う〜ん」

 つかさが文字通り困った顔になる。

 自分で言いたくないが、今のオレの服ははっきり言っておかしいだろ。

 礼装なのか、日常着なのか、仕事着なのか、どれにも見えないだろ。

 だけどオレにとってこの服はその全てだ。

 前の世界では



 『ザフトレッド』オレが最初に手にした力の名前。

「遠慮すんな、正直に言えよ」

 促すとつかさはさらに困った顔をしつつ、口を開いた。



「すっごく似合ってるよ」

 言葉とは裏腹にそれは弱かった。

 つかさは気付いたんだろう、この服が前の世界のオレの服という事に。

 それが似合ってると言う事は



「ユル〜くなったって言われて、天然なやつと付き合ってるのに、なかなか消えないんだな」

 オレがこの服を着ていた期間は、この世界で暮らしてる時よりも、もう短くなっていた。

 それでも力を求めていた時のことは消えない。

 それは今でも力を求めているからなのか



「でもシンちゃんはすっごく優しいよ! 強いだけじゃないよ!」

 でも求める力の質は変わった。

 漠然としたものから小さいけど確かなものに



「泣くなよな、まだ困らせることは言ってないだろ?」

 オレは抱きしめる、守りたいものを、失ってはいけないものを

 変わりきってないことはうすうす分かっていた。



 でもいつかは変われると思う。

 胸にうずくまってくる女の子がオレの側にいる限り。



 明日は成人式この世界のこの国では大人になる儀式。

 丁度良かった。



「つかさ、オレは変わるからさ

 この服を捨てるんだ

 それが、オレの覚悟だ」

 本当はこの後でくるんで古札入れに入れる予定だったんだけど、その前につかさに声を掛けられてしまった。



 なんにせよ、つかさはオレの覚悟が分かったのだろう。

 顔をあげてこっちを見てくる。



 さっきよりも困った顔になって



「えっ?

 だめだよ、捨てちゃったら」

「ええっ?」

 オレの覚悟は、彼女のお気に召さなかったらしく、結局困らせることをしてしまったらしい。





つづく   






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