『新たな始まり』





「これご近所の酒屋さんから」

 家族みんなでの夕食が終わると、お母さんが台所から酒瓶を持ってきたの。

 一番興味深げに見てるのはお父さん、その次はいのりお姉ちゃん。

 わたしとお姉ちゃんはこの前の誕生日で二十歳になったけど、あんまりお酒のことには興味がちょっと………。

 料理に使うのだったらわかるんだけどね



「これ大吟醸じゃん!? なんでこれを?」

 何気なく酒瓶を手に取ったまつりお姉ちゃんが驚きの声を上げたの。

 それならわたしでも知ってる。

 すっごい高いやつだよね。『大』がついてるくらいだし



「お祝いよ、明日二人の成人式だからね」

「そうか、じゃあ次会った時お礼を言っとかないとな」

「でも女の子の成人祝いに日本酒はちょっと………」

 一番上のいのりお姉ちゃんの苦笑にお姉ちゃんが頷く。

 そう、明日はわたしたちの成人式。



 わたしたちだけじゃない

 こなちゃん、ゆきちゃん、あやちゃん、みさちゃん

 それと、わたしの彼氏さんのシンちゃんも明日で成人。



 でもまだ実感なんて全然ない。

 今のわたしと高校生の時のわたし、変わってるかな、大人になってるかな?



「せっかく貰ったんだから、明日二人とも舐める程度には、ね」

「それはいいけど、つかさそれで寝ちゃうんじゃない? 今日興奮して寝れなさそうだし」

「はうっ!?」

 さすが双子のお姉ちゃん。よく分かってらっしゃる

 実は成人式に着る振袖を今日見せてもらってから、興奮しっぱなし。

 本当に今日は眠れないかも



「夜の風にでも当たってくれば、寒くて眠くなるよ」

「まつり、年頃の女の子になにを言ってるの!?」

「まあ近所は危ないとは言わないけど風邪を引くかもしれないからね」

「えっ?」

『えっ?』



 まつりお姉ちゃんの提案がすごく名案に思えたわたしは、もうコートを着て出ようとしているところだったの。





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