『隣りにいる人は』





 オレの彼女はどうにもこうにも天然だ



「つかさ、お参りは済ませたか?」

「うん」



 付き合って初めての初詣は、世間がそろそろ正月気分が抜け出る8日になってからだった。

 こんなにも初詣が延びたのは、オレ達2人してつかさの家の神社の手伝いをしていたからだ。



「でもまだまだ参拝するヤツら多いよな」

「ここは都内でも有数の神社だし、家のとことは規模が違うから」

「そうか? 鷹宮も初詣とか結構来てたぞ? それに埼玉新聞でも取り上げられたんだろ?」

「それはここ最近だよ〜。わたしが高校に上がる前は同じ市の人しか来なかったんだよ」

 今のあの地獄の様な人だかりからは想像出来ないが、そこの子であるつかさが言うんだから間違いないんだろう。

 何かがきっかけで人生が変わるなんてのはよくある事だ。



「で、つかさは何をお願いしたんだ?」

「え〜とねー、シンちゃんがもっと周りの人にいい印象もたれますように、って」



 オレの彼女は悪気なく爆弾を投げてくる



「そ、そんなに悪いのか? オレの印象………?」

「そ、そ、そういうわけじゃないんだけどね!

 この前同じ専門学校の人に会ったでしょ?」

「あーそういや会ったな」

 オレは特に会話に寄らなかったが、盗み見るようにこっちを見てたのは気付いてたし、

距離が遠い、と感じたのは気のせいじゃなかったらしい。



「そ、その後ね、学校で会ったら、『絶対あの人やばいって、そのうち怖い人が数人来て売られちゃうよ』とか

『つかさちゃんの画像ネットに流してるって』とか………」

「もういい、頼むからやめてくれ。正月早々凹む………」

 そんなにオレは周りに与える印象が悪いのか?

 一緒に住んでるこなたやゆたかからは日に日に顔が穏やかになってるとご評判なのに………。

「まあ別に人からどう思われようがいいんだけどな」

 つかさを始めとした何人かがオレの事を分かってくれる。

 それだけでオレは充分だし、異世界からやってきたオレには過ぎたるものだった。

「で、でもシンちゃんってほんとは優しくて、なんでもできてかっこいいのに誤解されるって悲しいよ………」



 オレの彼女は超が付くほどお人好しだ





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