『なぎ払うのは運命か、絆か』
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わたしはどれに反応するわけでもなく、ベッドの中で目を覚ます。
まだ部屋全体は暗くて、カーテンの隙間から漏れてくる光もない。
枕元に置いてある時計を手に取って見てみると、朝の五時、五分前。
「えへへ、今日はわたしの勝ちだね」
いつも寝逃げしてるわたしを起こしてくれる目覚ましのタイマーを切る。
いつも起きるのはこんな早い時間じゃなくて、もっと遅いんだよ。
でも今日は一週間で特別な日
だから今日はこんなにも早いんだよ。
「ふかふっかでいっつもありがとう♪」
わたしは鼻歌を歌いながら、制服に着替える。
いつもは朝ごはんを食べてから着替えるけど、今日は時間が足りなくなるかもしれないから。
今日は絶対に遅刻してはいけない日、今日は特別な日。
制服に着替えると、わたしはスキップをしたいのをこらえて、みんなを起こさないように抜き足、さし足、忍び足で台所に向かう。
だからいつもより台所に行くのに時間が掛かちゃったよ〜
そんなこんなでようやくわたしは、誰もいない台所に
「うふふつかさ、おはよう」
違った、お母さんがいる台所に着きました。
「お母さん、おはようございます」
わたしは挨拶をしつつも、作業へと取り掛かっていく。
きっと今のわたしの行動はわたしを知ってる人が見たら、驚くくらいに速い。
わたしとお母さんは言葉を交わしながらも、手を止めることなく作業を続けていく。
お母さんはみんなの朝ごはん作り、そしてわたしは自分とお姉ちゃんと…あの人のお弁当作り。
「えへへ、何にしよっかな〜♪」
わたしは冷蔵庫の中身を見渡す。
お弁当の中身のほとんどはいつも朝決めるの。
前まではあの人のお弁当のために食材を買ってたんだけど、それを知ったあの人が
『そんな特別にしなくていい。普通に無理しないで作ってくれ』
ってわたしの頭をなでながら言ったから、わたしは言うこと聞くしか出来なかったの。
そんなことされたら言うこと聞くしかないよねー♪
ぴーっ!!
朝には少しうるさい、ご飯が炊けた合図の音。
開けると湯気の中から出てくる、秋の珍味栗をふんだんにいれたご飯。
もちろんこれもわたしが昨日の内に作ったものだよ♪
それをお弁当に盛っていく。
あの人は凄く食べるから、ご飯の箱で二段、おかずで三段もいるんだよ〜。
わたしはお弁当箱に焼き魚、天ぷら、ひじきと大豆の煮物、といったおかずを入れていく、そしてデザートには秋の果物りんごと柿。
どんどんとお弁当の隙間が埋まっていく。