『食わず嫌い』





「はうっ!」

「どったの?」

「国語の教科書忘れちゃった…どうしよう………」

 つかさは困った顔をしながらなおもあるはずないのに自身の鞄を覗きこむ。

 なんで人間ってのは困ったらムダな事をするんだろな。

 つかさを冷ややかに見ながら、そんな事を思っていた。



 解決方法は少なくないがある。だがそれをつかさに教えてやる気はない。

 考えれば誰にでも思いつく方法だからだ。

「かがみさんにお借りしてはいかがですか?」

「あっ、そっか!」

 見かねたのかみゆきさんが助言をするとつかさの顔は一転、晴れやかな顔になる。

「そうと決まれば早く行って来たら? もう時間ないよ」

「ほんとだ〜じゃあ行ってくるね」

 小走りに教室を出て行くつかさをオレは一瞥して、窓の外に目を向ける。

 そんなオレをこなたは訝しげな顔で見ていた。



「シーン、ゲマズ寄ってっていーい?」

「答えは聞いてないんだろ?」

 放課後、誘ってくるこなたにオレは大げさに肩を竦めて答える。

 その答え方に満足したのか、こなたはニッコリと笑う。

 この世界に来て約4ヶ月、ようやくオレもこなたとの会話のやり方が分かってきた。

 もっとも全然嬉しくない。

「つかさも行く?」

「あ、う、うん…今日は神社の方のお手伝いをするから無理なの…ごめんね………」

「そっか…かがみは行くって言ってたんだけど、手伝いはしなくていいのかな?」

「うん、今日はわたしの当番だから…でも、そうすると、わたし一人で帰らないと………」

「つかささん途中までですが、私と一緒に帰りませんか?

 私も用事があって泉さん達とは一緒に行けませんので」

 1人でオロオロするつかさに、さっきと同じくにみゆきさんが助け舟を出す。

「うん! ゆきちゃん一緒に帰ろ!」

 つかさはそう言ってみゆきさんの腕に飛びつく。

「それでは泉さん、シンさん、私達はこれで失礼します。かがみさんに宜しくお伝え下さい。」

「うん、今度はみんなで行こーね♪」

「うん! じゃあね、こなちゃん…アスカくん………」

 恐々オレを見るつかさに小さく頷いて、オレはみゆきさんに手を振った。





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