『こたつ』





 ちっちっちっちっ



 何度目か分んないくらいに時計を見る。

 何度目かも分んないくらい見てるから、時計の指す時間は全然変わってない。



 それでも私の大好きな人は一歩一歩と、家に向っているはず

「でもバイクで帰ってくるから、『一歩』って言うのかな〜?」

 それを尋ねたらきっと、一言知らないって言って、私の頭を優しく撫でてくる。



 早く帰ってきてほしい

 理由はもちろん、十時間ぶりに夫の顔が見たいから

 それにこれを一刻も早く見てほしいから



 ぶおおおおん



「あっ!」

 バイクの音が聞こえてきたので、私は玄関に向う。



 季節は秋が一瞬で過ぎて、お布団から出るのが少し遅くなっちゃう時期を迎える。

 だからきっとシンちゃんは寒い思いをして帰ってくる。



 だから準備をしたの

 シンちゃんが喜んでくれる様に



 かちゃ



 ドアの鍵が回り、開く。

 そこには大好きな夫であるシンちゃんの姿。





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