『こたつ』
1
ちっちっちっちっ
何度目か分んないくらいに時計を見る。
何度目かも分んないくらい見てるから、時計の指す時間は全然変わってない。
それでも私の大好きな人は一歩一歩と、家に向っているはず
「でもバイクで帰ってくるから、『一歩』って言うのかな〜?」
それを尋ねたらきっと、一言知らないって言って、私の頭を優しく撫でてくる。
早く帰ってきてほしい
理由はもちろん、十時間ぶりに夫の顔が見たいから
それにこれを一刻も早く見てほしいから
ぶおおおおん
「あっ!」
バイクの音が聞こえてきたので、私は玄関に向う。
季節は秋が一瞬で過ぎて、お布団から出るのが少し遅くなっちゃう時期を迎える。
だからきっとシンちゃんは寒い思いをして帰ってくる。
だから準備をしたの
シンちゃんが喜んでくれる様に
かちゃ
ドアの鍵が回り、開く。
そこには大好きな夫であるシンちゃんの姿。