ど、どうしよ〜!?

 バスの中も電車の中も、会話なんてほとんどなかったのに

 さっきのでますます気まずくなっちゃたよ〜



 あの人がわたしたちを体を張って助ける時に出てしまう、こなちゃん命名の『パルマ』

 最初にそれをされた時から今でも全然慣れないけど、でもそれであの人のことを嫌いになったことなんてない。

 だってあの人は一生懸命だから、一生懸命わたしたちを助けた結果しちゃうことだから。

 でもあの人は自分にすっごく厳しいから、わたしくらいの言葉じゃあ届かない。

 それが証拠にあの人は顔が厳しくなっちゃったの………



 どうにかしたい

 せっかくあの人と帰れてるのに、こんなの嫌だよ

「つかさ!」

「ふえっ!?」

 わたしはいきなり襟首を引っ張られる。

 見ると本当に目の前に電柱があったの。



「あんたに学習能力ってのはないのか!?」

「えへへ」

「えへへ、じゃないだろ! ったくずっと見とけって言うのかよ」

「えっ、してくれるの?」

「するか!」

 わたしの馬鹿な行動に呆れた様子のあの人。でもちょっとだけ表情が柔らかくなった。



「シンちゃん今ね、新しい料理に挑戦中なの、何か食べたいものある?」

 安心したからわたしはちょっとだけ口が軽くなれたの

 そんなわたしをあの人は見つめてくる。

 わたしはすっごく恥ずかしくて、胸がどきどきしたけど目をそらさなかったの。

 だってわたしはあの人とおしゃべりしたいから、だってわたしは嫌って思ってないから!

 そして



「そうだなー」

 見つめてくるあの人の目が笑った。

「バルサミコ酢」

「えっ?」

「バルサミコ酢を使った料理。好きなんだろ?」

「そ、それは、単に言葉の響きが気に入っただけで………」

 慌てるわたし、でもあの人はそんなわたしを楽しそうに見てる。

 いつものあの人、ちょっとイジワルで子供みたい。

 そんな姿は学校ではそんなに見せてくれないよね



「おいしくなかったらごめんね」

「そん時でも食べてやるさ」

 そう言うとあの人はわたしの頭をくしゃりとなでてくれた。



 もしこれから二人だけで帰ることになっても、きっと大丈夫





〜 f i n 〜   







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