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「帰るわよ」
いつものようにお姉ちゃんが、わたしたちのクラスに迎えにくる。
最近すっごくこの下校時間が楽しみになっちゃった
お姉ちゃんがいて、こなちゃんがいて、ゆきちゃんがいて
「どんだけ早いんだよ、あんたは」
あの人がいる
『帰り道』
あの人とは同じクラスだし、昼ごはんだっていつも同じ
だけどわたしはみんなみたいに、上手くあの人とおしゃべりができない
あの人と何を話していいのか分からないから
だからわたしはあの人からいつも一番遠いところにいる。
だけどこの登下校時は少しだけ、ほんとうに少しだけ、あの人と近くなる。
でもやっぱり二人で話すことはほとんどないんだけどね
「皆さん、今日は先にお帰り下さい」
帰り支度をすませていたわたしたちは、一人だけしていないゆきちゃんを見る。
ゆきちゃんは都内に住んでいるから登校時は一緒じゃないけど、下校の時は駅までいつも一緒に帰っているんだけど………
「委員会ね、手伝うわよ」
学級委員を一年の時にやってたからお姉ちゃんはすぐに理由が分かったみたい
「で、ですが………」
「いいの、いいの、いつものことじゃない、ねっ」
「ではお願いできますか」
ゆきちゃんは丁寧に頭を下げる。
勉強もできて、運動もできて、すっごく優しくて、とってもできるのにそんなことを鼻にもかけないゆきちゃん。
そんなゆきちゃんから頼まれるお姉ちゃん
同じクラスじゃなかったら、双子じゃなかったら雲の上の存在だったかもしれない。
そう思うと本当にこの出会いって
「すごいよね〜こなちゃ…ん………?」
きょろきょろとあたりを見まわすけど、こなちゃんの姿が見えない
「あいつならバイトだから先に帰ったぞ」
お姉ちゃんとゆきちゃんの反応からみて、気づいてなかったのはわたしだけみたい、ごめんね、こなちゃん
でもそれだったらみんなで帰れないね………。
「じゃあわたし帰るね」
「ん? 残らないのか?」
「うん、家のお手伝いがあるから」
だから今日は一人。あの人がきてからは初めての一人帰宅。
寂しくて泣いちゃったりして
「だったらオレも帰るか」
「つかさの警護よろしくね」
え?
「仕方ないな、帰り道でコケそうだしな」
ええっ!?
「つかさ帰るぞ」
「ええええええー!?」
さらりと言うあの人とは反対に、わたしは驚きの声をあげちゃったの