がちゃ



 オレがインターホンを押すかどうか考えている間に、柊家の扉が開く。

 全くオレって運がいいなっと思ったのも束の間、出てきた相手は困惑した表情のつかさ。

 その顔はまさに、なんで来たの? というそのもの。

 だけどオレはつかさと終わらせる気なんてない!

 せっかくつかさのことをもっと知って、オレのことをもっと知ってもらったってのに



「つかさ―――」

「ふぇぇぇぇぇんんん!」

 オレが言葉を掛けようとした瞬間に、つかさがタックルの様な勢いでオレの体にぶつかってくる。しかも泣きながら

 なんでこうなるんだ!?



「シンちゃん、ごめんね、ごめんね、わたし、ごめんね、うわぁぁぁぁぁん!」

「えっと………」

 一方的に謝られるオレは完全にわけが分からない

 それでもつかさはオレの胸で泣き続ける。



「ごめんねシンちゃん、ぐずっ、わたし冗談って分からなくて、そ、それでお姉ちゃんがうわぁぁぁん!!」

 断片的ではあるけどつかさが謝る理由と泣く理由は分かった。

 でもお人好し過ぎだろ、だってどう見ても



「悪いのはオレだ」

「ふぇっ?」

 力に任せてつかさを潰さないように、オレは怒りを抑えながら優しく抱きしめる。





「つかさがいつも怒らないから調子に乗った」

 つかさはいつも笑いかけて来てくれるのに、オレはそれに甘えてしまっていた。

 それは頼るのとは違う。ひどく自分勝手な行為。



 大切なものを無くすのは戦いばかりじゃない、自分の手でもそれを無くしてしまう。

 理解してるつもりだけど、気付くのがいつも遅い。



「ごめんなつかさ」

 こんなんだったらオレはいつか本当につかさを失ってしまうんじゃないか?



 ぎゅぅぅ



 力を入れたのはオレじゃない、つかさの方だった。

 そしてつかさは未だ涙が残る瞳でオレを見てくる。

「じ、じゃあ、おあいこ、ってことでいいの?」



 おあいこ? オレが一方的に悪いだろ?

 どこまでお人好しなんだよ



「ダメだ」

「えっ?」



 きっとつかさは以前に言った通り、ずっとオレに付いてきてくれるだろう

 だったらオレは?



「悪いのはオレだ」



 それに甘えないようにしないとダメだ



「だから悪いのはオレだ」



 つかさを泣かせたのが許せないから

 二度とこんなことをしたくないから



「じゃあシンちゃん、もう一緒だね」

「ん?」

「もういつもと一緒だね」

 オレの自分なりのケジメに気付いたのかつかさは微笑む。

 これを出されると全てが解決する、それくらいに眩しく、太陽のような笑顔。



「じゃあつかさ、改めて誕生日おめでとう」

「うん、ありがとーシンちゃん」



 夜になり、もう数時間で誕生日が終わるはずなのに、さっきよりも明るく見えた。





〜 F i n 〜   






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