「シンさん、シンさん、起きて下さい」

「ううん、むにゃ………」

 私は向かいの席で眠っているシンさんを起こします。

 泉さんから聞いていたように、あの方の寝顔を見ていると何時までも見ていたくなります。

 しかし残念ながらそれは出来ません。なぜなら下校時間が迫っているからです。



「ふぁぁ〜終わったのかみゆき?」

「はい」

 本当はあの方の寝顔に魅入られて勉強は余り進みませんでしたが、こういう日もたまにはいいと思います



「じゃあ帰るか」

「そうですね」

 あの方との仲が少しは進んだのですから…多分ですが





 すでに日は落ちており、暗くなった道を私達は歩きます。

 あの方と二人っきりです。

 好いている方と一緒に帰るというのは、嬉しいのですがどきどきしてしまいます

 そんな私の気持ちに気付いて欲しい様な、欲しくない様な



「そうだ、みゆき」

「は、はい、なんでしょう!?」

 そんな事を考えていると、いきなりこっちを振り向いてきたあの方と目が合います。

 ちょうど秋風が吹いてこなかったら、私はオーバーヒートでどうにかなっていたかもしれません



「さっきのお前が言った誕生日プレゼントなんだけどな」

「シ、シ、シンさん!? き、聞こえてらっしゃったんですかー!?」

「ああ、何とかな。『私達のそばにずっといて下さい』だろ?」

「は、はぅぅぅーっ!!!」

 私は恥ずかしさから、悲鳴とも奇声とも取れる珍妙な声を上げました。

 もう秋風なんてなんの効果もありません。

 今から穴を掘って地球の逆側に出て銀河に逃げて行きたいくらいです



「あ、あのさ、やってみせるから、お前達とずっとそばにいられるように………」

 真っ赤になっておっしゃっるあの方に

「は、は、はい! ぜひ、ぜひ、お、お、お願いしま〜すー!!!」

 それよりも赤くなっている私は頭を下げました。





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