『音』
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家を出る前に忘れ物がないかをチェック。
軍人だった時に、物を持ってきていない=死につながる、を叩き込まれたから習慣化してることだけど、
これを話すと誰からも必ず驚かれる。
どうやらオレのイメージに合わないらしい。
この前なんてあろうことか、彼女であるみゆきにすら驚かれた。
もっともその後に慌てるみゆきが可愛らしかったので、許したけど。
「よし、あるな」
最後に手に持ってるのとは別に、ズボンのポケットにあるカギを確認して、オレは家を出る。
今日はみゆきと一緒の抗議を受ける日。
同じ大学に入ったんだから、高校の時みたいにいつもいられると思ってたけど、そう上手くはいかないらしい。
だからみゆきに確実に会えるこの曜日は、素直にうれしい。
しかも幸運なことに今日はみゆきの誕生日。
今までの不運っぷりが嘘の様…とはいかない、今日はバイトが入っている。
この前もみゆきと会う時バイトのせいで早くに別れてしまった。
その時、口ではみゆきは言わなかったものの、明らかに寂しそうな顔をしていた。
オレがみゆきの笑顔を奪ってる
そして今日もそんな行為をしてしまう。
カツンカツン
階段を下りる音も、いつもよりなんか重たく聞こえる。
さてどう切り出すかな?