『友達以上』
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「礼」
みゆきの言葉をきっかけにクラスの全員が大なり小なり黒井先生に頭を傾け、今日の授業はおしまい。
のはずだが、残念ながらオレは受験生、むしろこれからが本番といっていい。
こんなに長い期間勉強を継続することができているのは、ひとえにオレの努力ではない。
何人かのお節介焼きな人間のせいだ。
そいつらの期待に応えたいってのはもちろんある
だからこうやって、すぐに筆記用具を用意しちゃうんだろう。
「すみません、本日は家の用事が」
「えっ?」
「ごめん、私も今日つかさと家の当番すっかり忘れてたわ」
「なに!? ……まあ、それなら仕方ないな」
本当に申し訳なさそうに謝ってくるみゆき、かがみを見たらこれ以上は何も言えない。
それにそもそもオレは勉強が嫌いだ。気分転換に休みもいいだろう。
「こなた」
「わたしバイトだよ」
先に答えを言われ一瞬硬直。
つかさもむろん無理。
クラスを見渡すと男で話すメンツはもう帰ってる。
アニ研部に行くと、なんかネタにされそうだし
「行くところないな」
オレの不満顔に、4人はまるで弟を見るかのような顔で苦笑を浮かべた。