『親友と友人と』





「例えばピンク〜♪」

「ゆたかご機嫌だな」

 朝ごはんを鼻歌混じりで食べるゆたかの様子を見ると、こっちまで気分が良くなる。



「うん! 今日はみなみちゃんの家で一緒に誕生日をお祝いするんだよ」

「そっか、それは良かったな」

「うん!」

 ゆたかの頭を撫でると、ゆたかは人懐っこい笑顔をオレに向けてくる。

 その笑顔にオレはもう1度頭を撫でる。

 傍から見ると仲の良い兄妹に見えるかもしれない。

 だけどオレとゆたかは兄妹ではない、それどころか血の繋がりすらない。

 それなのにゆたかはオレを兄として慕ってくれている。そんなゆたかにオレもまるで妹の様に接した。

 最初はゆたかを妹の様に扱うのに抵抗があった。

 でも気付いたらオレとゆたかは兄妹、家族になっていた。



「でもゆーちゃんあんまり遅くなったりしたらダメだよ。

 お父さんも心配するしね」

 オレ達のやりとりを見つつ、こなたが釘を刺す。

 オレが兄としたら、こなたはゆたかの泉家での姉だ。



「あっ…うん、そうだよね………」

「あっ、いや、でも別に少しくらいだったら、わたしがどうにかするよー、うん」

 シュンとするゆたかにこなたは慌てて付け加える。

 ゆたかの事になるとこなたは日頃からは考えられないくらい面倒見が良くなる。

 それはやはりこなたもゆたかの事を可愛がっている証拠だろう。

 日頃オレの事をシスコンとからかうが、この姿を見るとこなたも同レベルだろう。

 だからこそこなたの言う事も分かる。

 みなみの家はみゆきの家のお隣、つまり都内にある。

 距離にしたらかなりあるし、帰ってくる途中で日が暮れてしまうだろう。

 夜道をゆたか1人で帰らせるなんて心配この上ないだろう。もちろんオレもその考えには賛成だ。

 ただ、ゆたかの親友を祝ってあげたいという気持ちはかなえてやりたい。



「そうだ! 終わったらシンが迎えに行ったらいいんだよ!」

「なるほど、その手があるな!」

 こなたのナイスすぎる提案にオレも膝を叩く。



「そ、それだったら、お兄ちゃんもみなみちゃんの家に行かない?」

「他に1年生も来るんだろ? オレが行っても邪魔なだけだろ」

 ゆたかの意見に困った笑みを浮べる。

 みなみとは知らない仲じゃないし、出来ればオレも祝ってあげたい。

 ただせっかく同学年の友達が祝ってくれてるのに、違う学年、しかも男が1人で行ったんじゃ、みなみを気を遣わせるだけだろう。



「ううん、わたしの他には田村さんっていう同じクラスの人と高良先輩だけだから、

……お兄ちゃんならみなみちゃんもきっと喜んでくれるし…お願いします!!」

 真剣な様子で頭を下げるゆたかに、オレはこの場で1番発言力を持ってるこなたに目で問いかける。

 こなたは頭を掻くと

「うん、だったらいいんじゃない。シンが一緒だとわたしも安心だし」

 多少渋々といった様子で首を縦に振る。

 やれやれ、ゆたかにはやっぱり甘いな、こなたは



「ありがとう、お姉ちゃん!!」

「良かったな、ゆたか」

 オレはみ三度ゆたかの頭を撫でる。ってゆたかに甘いのはオレも一緒か

 オレは心の中で苦笑いした。







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