『つっぱしる女と怒れる瞳』




 レクイエムに続いてメサイアが光と共に宇宙に消えた。

 オレはその姿を不時着した月面で見ている事しか出来なかった。



 きっとこの戦いは………



「シンここで待ってて。私救助を呼んでくるから」

 彼女もまたオレと同じ事を思ったのだろう。小破した自分の機体に走っていく。



 今でもオレが選んだ選択は正しかったかどうかは分からない

 議長が本当に正しいのかはオレには分からない

 ただオレは議長の作ろうとした世界が正しいと思った

 だけど心のどこかで迷っていた

 そんな中途半端な気持ちでは戦いに勝てるはずもなく、オレは負けるべくして負けたといえるのかもしれない



 どうなるんだこの世界は………?

 アイツ達はちゃんとこの世界を平和に導いてくれるのか?

 これからオレはどうすればいい?

 この問いかけに答えてくれるものは誰もいない。





『シン』

 いつの間にか気を失っていたのか、誰かが呼ぶ声に目を開ける。

 目を開けると奇妙な空間にオレは浮いていた。

 さっきまでいた月面とは明らかに違う

 感覚的には宇宙に漂っているみたいだが、周りの色が宇宙のように全てを飲み込む暗黒ではなく、

薄いオーロラのようなのが全体にかかっていた。



『そんなに驚いていないようだな』

 声と共に目の前に金髪の長髪の男の姿が現れる。

「ああ、さっきあの子にあったんだ。その時もこんな感じだったからな」

『そうか』

「……レイ、お前がこうして現れたって事は………」

『お前の考えている通りだ。俺は死んだ』

 オレの言葉にレイは頷く。

 さっきオレの前に現れた少女も少し前にこの世を去っていた。

 だが経験しているからといって、オレは親友の死にショックを受けないほど強くはなかった。



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