『つっぱしる女と怒れる瞳』
1
レクイエムに続いてメサイアが光と共に宇宙に消えた。
オレはその姿を不時着した月面で見ている事しか出来なかった。
きっとこの戦いは………
「シンここで待ってて。私救助を呼んでくるから」
彼女もまたオレと同じ事を思ったのだろう。小破した自分の機体に走っていく。
今でもオレが選んだ選択は正しかったかどうかは分からない
議長が本当に正しいのかはオレには分からない
ただオレは議長の作ろうとした世界が正しいと思った
だけど心のどこかで迷っていた
そんな中途半端な気持ちでは戦いに勝てるはずもなく、オレは負けるべくして負けたといえるのかもしれない
どうなるんだこの世界は………?
アイツ達はちゃんとこの世界を平和に導いてくれるのか?
これからオレはどうすればいい?
この問いかけに答えてくれるものは誰もいない。
『シン』
いつの間にか気を失っていたのか、誰かが呼ぶ声に目を開ける。
目を開けると奇妙な空間にオレは浮いていた。
さっきまでいた月面とは明らかに違う
感覚的には宇宙に漂っているみたいだが、周りの色が宇宙のように全てを飲み込む暗黒ではなく、
薄いオーロラのようなのが全体にかかっていた。
『そんなに驚いていないようだな』
声と共に目の前に金髪の長髪の男の姿が現れる。
「ああ、さっきあの子にあったんだ。その時もこんな感じだったからな」
『そうか』
「……レイ、お前がこうして現れたって事は………」
『お前の考えている通りだ。俺は死んだ』
オレの言葉にレイは頷く。
さっきオレの前に現れた少女も少し前にこの世を去っていた。
だが経験しているからといって、オレは親友の死にショックを受けないほど強くはなかった。