『夏の日』
1
照りつける太陽、聞こえる蝉の声。
「暑い〜」
そしてうなだれるわたし。
夏といえば、出会いの季節、イベントの季節。
だが現実にはかくも残酷である。そんなものを考える余裕すら持てない。
「暑い〜」
わたしは人類の英知、エアコンのリモコンに手を伸ばす。
しかしすんでのところでわたしの手は空を切る。
「まだイケる。節電しろ」
リモコンを奪ったのは、わたしの家の同居人で、かつ異世界からやってきたエースパイロットという、
まさにハイスペック設定を誇るこの少年。
そのハイスペックに偽りなく、私は攻略されてしまい、今では私と彼は恋人同士。
といってもさすがにその設定だから落ちたというわけではない。
「節電っていうけどね、なんでも規制すればいいってもんじゃないと思うよ」
汗をかいてはいるものの、涼しい顔をしてるシンにわたしは食いつく。
もう限界である。むしろこんな時間までエアコンをなしで耐えたわたしを誉めてもらいたい!
「ダメだ」
「そりゃ、シンはコーディだから平気だろうけどさ〜」
異世界から来ただけあってシンは元の世界で、遺伝子の強化がされている。その為この暑さもそんなには堪えてはいない。
といってもシンは化け物でもないし、心だってむしろ現代人以上に豊かである。
そんなわたしの見解を知ってるから、一見やばそうな発言にもシンは呆れたジト目を向けるだけ。