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「……こなた、桜ってこんなに綺麗だったんだな…ようやくゆっくり見れたよ………」
「……シン…記憶が………?」
シンがわたしにかけた言葉がさっきまでと全く違った雰囲気だったので、わたしは思わず尋ねていた。
「……オレ、お前のこと忘れてたん…だよな………」
「……うう、シンの…ばか…ひっく…ばかぁー!………」
私は泣きながらシンの胸を叩いた。
「オレ記憶無くしてお前に迷惑掛けなかったか?」
私が泣き止むのを待ってシンは質問してきた。
「覚えてないの?」
「ああ。昨日の昼くらいからお前と会話した記憶が無いんだけど………」
ここで私が嘘をつけばシンの性格から私のものになるかもしれない。
でもそんなことをしたらまたバチが当たる気がする………。
それにこんな方法でシンを手に入れたらみゆきさんたちに今度こそ絶交されてしまう。だから私はこう答える。
「してないよ、迷惑」
「そうか…よかった」
「でも………」
私はシンの胸に顔を埋めて続ける。
「寂しかった………」
「悪い」
シンは短く謝ると、私の頭に手をのせた。
「ねえ、桜が散らないうちにお花見しよ! みゆきさんやかがみやつかさも誘って!」
「いいなー! やるか!」
私たちは帰りながら週末の計画を話した。
今年のお花見は今までにないくらい楽しそうな気がする。
〜 f i n 〜